オリンピックが始まりました。アブノーマルな形態の中でのオリンピック、テレビで見る限り『ウサギ小屋』のような選手村の部屋に押し込められ、外出もできない外国人選手たちは、果たして日本に対して、どのような印象を持って帰国するのでしょうか・・・・心配です。

 

 

前回1964年の東京オリンピックの頃、続々と来日したモダンジャズのアーティストたち、その後に発売されたアルバムから、当時の日本の印象を読み解きます。

 

 

 

JAZZ IMPRESSIONS OF JAPAN / THE DAVE BRUBECK QUARTET (COLUMBIA CL 2122)

 

1964年の日本ツアーの印象を綴ったアルバム。BRUBECK4には『JAZZ IMPRESSION OF THE USA』『JAZZ IMPRESSION OF EURASIA』『JAZZ IMPRESSION OF NEW YORK』があり、これもJAZZ IMPRESSIONシリーズの1枚。「TOKYO TRAFFIC」「RISING SUN」「TOKI’S THEME」「FUJIYAMA」等、日本を意識したタイトルが並びます。先日バッハ会長が「JAPANESE PEOPLE」と言わなければならないところを「CHINESE PEOPLE」と失言して、ヒンシュクを買いましたが、この頃の欧米人の多くは、日本と中国の区別ができていません。このアルバムでも冒頭から、如何にも中国的な銅鑼 (どら)のような音が聴こえてきます。そんな中では「KOTO SONG」は、この後も何度もレコーディングすることになる日本的な森閑とした品のある名曲で、明らかにDESMONDのアルトは尺八の音色、BRUBECKのピアノも筝(こと)の音色を意識しています。BRUBECK 4の演奏としては、いつもよりBRUBECKが頑張っている(つまりPAUL DESMONDの出番が少ない)ように思います。

 

 

THE TOKYO BLUES / THE HORACE SILVER QUINTET (BLUE NOTE 4110)

 

1962年7月の録音。「TOO MUCH SAKE」「SAYANORA BLUES」「THE TOKYO BLUES」「CHERRY BLOSSOM」「AH! SO」と全ての曲が日本を意識したタイトル、ジャケットにも日本庭園をバックに着物姿の日本人美女とのスナップを使用、如何にも日本向けと思われますが、演奏は至って普通のハード・バップ。侮れないのは、HORACE SILVERの全吹込みの中でも1~2位を争う素晴らしい作品であること。そして注意深く聴いているとHORACE SILVERのピアノの細かなところで日本的なフレーズが感じ取れます。ただタイトル曲のテーマ部分が中華風なのが残念です。

 

 

KYOTO / ART BLAKEY & THE JAZZ MESSENGERS (RIVERSIDE RM 493)


 

 JAZZ MESSENGERSの親日家ぶりは、一時期、ART BLAKEYやWAYNE SHORTERの奥さんが、日本人だったことからも容易に理解できます。さすがに、このグループには日本に因んだタイトルの曲に中国を連想させるような演奏はありません。RIVERSIDEの一つ前のアルバムが『UGETSU』で、雨月物語からヒントを得た?タイトル曲の他にSHORTER作の「ON THE GINZA」も含まれていて迷いましたが、B面が「NIHON BASHI」(渡辺貞夫作)、「KYOTO」(FREDDIE HUBBARD作)と続く、こちらのアルバムを選択しました。但しタイトルだけで、この曲のどの部分が日本橋で、どこが京都なのか、日本的な雰囲気は全く伝わってきません。もっとも、どうしても日本的なメロディを取り入れたいなら、LEE MORGAN(月の砂漠)やTHELONIOUS MONK(荒城の月)のようにJAPANESE FOLK SONGを取り入れれば良いのであって、無理に日本的なものに仕上げようとすると、アルバムとしての完成度が下がってしまうことを危惧したのでしょう。