コレクター人生の中でもSONNY ROLLINS10インチが全3枚揃った時は一際、嬉しかったですね。ネット等とは無縁に近い時代でしたから、随分と時間が掛かりました。20年くらい前のことです。

 

 

SONNY ROLLINS QUARTET(PRESTIGE PRLP 137)

 

全8曲のうち「THIS LOVE OF MINE」「SHADRACK」「WITH A SONG IN MY HEART」の3曲はSP盤音源、残り5曲は、この10インチがオリジナル。初リーダー作ですが、既に“良く歌うROLLINS”は完成の域に達しています。

 

PRESTIGEの初期の“青”盤は、音質が良くないことで有名で、剥離剤が云々という方もいましたが、剥離剤なら時間が経てばクリーニングで綺麗になりますが、“青”盤は盤質自体に問題がありました。録音された1951年頃、アメリカは朝鮮戦争でプラスチック需要が急速に高まり、レコード会社の一部では材料に再生プラスチックを使用せざろう得ない状況でした。

 

当時は再生技術が、まだ十分ではなく、潰したレコードのレーベル(紙)とプラスチックが、うまく分離できないため、紙の成分が再生プラスチックに残ってしまい、それが極端な場合「ザー」と雨が降っているようなバックグラウンド・ノイズになりました。これはもう手の施しようがなく「10インチ嫌いのコレクター」が多い主要因にもなっています。本盤のノイズは極少ですが、RVG録音でないため下掲の186や190のようなド迫力はありません。それでも素直な音だと思います。

 

 

 

SONNY ROLLINS QUINTET FEATURING KENNY DORHAM(PRESTIGE PRLP 186)

 

後に『MOVING OUT』(PRESTIGE 7058)に収録される4曲は、この10インチリアル・オリジナルです。全曲ROLLINSのオリジナルですが『TOUR DE FORCE』収録のアブストラクトな3曲へと向かう萌芽のようなものが感じ取れます。急速調の曲が続く中、スローテンポの「SILK N’ SATIN」には正直「ほっ」とします。RVGの録音・マスタリングは、ROLLINSのテナーの一番「おいしい」ところを余すことなく捉えています。

 

 

 

 

SONNY ROLLINS & THELONIOUS MONK (PRESTIGE PRLP 190)

 

無人島の一枚。又は棺桶盤とも言います。そもそもオリジナル盤に固執し、SP盤まで遡るようになったのは、この10インチの音が、後に12インチ化(『MOVING OUT』(PRESTIGE 7058)、『THELONIOUS MONK WITH SONNY ROLLINS』(PRESTIGE 7075)に分割収録)されたものより、ずっと生々しかったからです。しかも大好きなROLLINSとMONKの至高の名演。リマスタリングの名手、RVGでも自分が録音・マスタリングしたものは、リマスターしてもオリジナル以上のものにはなりえない典型的な例です。