RUDY VAN GELDERが録音・マスタリングしたレコードは、モノラル盤が生産されていた時期は、モノラル盤をモノラル専用カートリッジで聴いてこそ、RVG録音の本領が発揮されると思います。

 

それでも、BLUE NOTEのRVG録音・マスタリングのステレオ盤は、例えばRIVERSIDEのステレオ盤より、ずっと良いと思います。理由は楽器の配置が的確なこと。過去に拙ブログで批判したステレオ盤(例えばBLUE MITCHELLの『BLUE’S MOODS』やMONKの『UNDERGROUND』)は、ベースが左チャンネルを占拠して主役の邪魔をし、鑑賞の妨げになっています。ところがRVGのステレオ盤はベースが常に中央に位置しています。例えばクインテットの時には(左)トランペット、(中央)ピアノ、ベース、(右)サックス、ドラムスの位置です。盤によってサックスとトランペットの位置が替わることはありますが、他は、ほぼ、この位置で固定、特にベースが中央に位置していると、聴いていて落ち着きます。RVGも最初のステレオ録音の際は、試行錯誤していたようですが、すぐにベースが中央に無いと違和感を持ったようです。

 

残念なことに、BLUE NOTEに関しては圧倒的にモノラル盤を蒐集してきましたので、ステレオ盤は数えるほど。特にRVGが試行錯誤したと思われるステレオ最初期の『BLUE TRAIN』『BLUES WALK』『SOMETHIN’ ELSE』は、手持ちは、全てモノラル盤のため検証できず、4000番台の所有盤で検証します。

 

 

ROLL CALL / HANK MOBLEY (BLUE NOTE 84058)

 

MILES DAVIS QUINTETに呼ばれる直前の絶好調のHANK MOBLEY、3部作の1枚。配置は(左)トランペット、(中央)ピアノ、ベース、(右)サックス、ドラムスの基本パターン。但し「THE MORE I SEE YOU」の最後の部分で、MOBLEYが右チャンネルから左チャンネルに移動します。(RVGのお遊び?)

 

 

 

THE FREEDOM RIDER (BLUE NOTE 84156)

 

配置は(左)トランペット、(中央)ピアノ、ベース、(右)サックス、ドラムスの基本パターン。但しドラム・ソロのタイトル曲は、当然中央にBLAKEYが位置し、中央にタムタム、(右)バスドラ、(左)ハイハット。

 

 

 

JUJU / WAYNE SHORTER (BLUE NOTE 84182)

 

 ワンホーン・カルテット。配置は(左)サックス(中央)ピアノ、ベース、(右)ドラムスで、ベースとピアノが、中央に位置するパターンに変化なし。SHORTERは、昔から他のアルバムもモノラル盤は、(入手には)結構ハードルが高くて・・・。

 

 

 

 

MAIDEN VOYAGE / HERBIE HANCOCK (BLUE NOTE 84195)

 

泣く子も黙る大名盤、いまさら内容云々は必要ないと思います。配置は(左)トランペット、(中央)ピアノ、ベース、(右)サックス、ドラムスの基本パターン。

 

 

DEMON’S DANCE / JACKIE McLEAN (BLUE NOTE 84345)

 

モノラル盤が、製造されなくなったLIBERTY期のものを1枚。必殺の「SWEET LOVE OF MINE」が、あまりにも有名ですね。プロデューサーは写真家としての印象が強いFRANCIS WOLFF。配置は(左)サックス、(中央)ピアノ、ベース、(右)トランペット、ドラムス。サックスとトランペットが入れ替わっている以外は、基本パターンと同じ。

 

 

モノラル盤とステレオ盤の両方所有する『MAIDEN VOYAGE』と、ステレオ盤しか存在しない『DEMON’S DANCE』を除けば、モノラル盤を熱望するも、良質盤が見つからず、泣く泣くステレオ盤で妥協しました。でもモノラル盤との比較さえしなければBLUE NOTEのRVG録音のステレオ盤に不満は全くありません

 

じゃ~、ピアノ・トリオの場合は、どうなんだ?と質問が来ると思いますが、ステレオ盤で、RVG刻印のBLUE NOTEのピアノ・トリオは、『BLACK ORCHID / THE THREE SOUNDS』(BLUE NOTE 84155)しか手元にありませんが、(左)ピアノ、(中央)ベース、(右)ドラムス、とベースは、しっかりと中央に位置しています。

 

 

 

それでも、RVGのステレオ録音が、本当に花開くのは、モノラル盤が存在しないCTIレーベルから。これはRVG自身が語っていることです。

 

SHE WAS TOO GOOD TO ME / CHET BAKER (CTI 6050 S1)

 

(中央)トランペット、ボーカル、アルトサックス、ピアノ、ベース、ドラムス、(左右)フルート、ストリングス。

 

主要楽器が中央に集まり、エレピが左右に動くこと、DON SEBESKYのストリングスが無ければ、ほぼモノラル盤。70年代特有のアタッチメントを付けたRON CARTER(大嫌いな音)のベースが中央で、後ろに隠れてくれたのは大正解。DEAD WAXにRVG手書きサインの他にVAN GELDER刻印。レーベル面、右中段STEREOの上に RVG 87710 Aの表記があるのは、録音に自信の表れか?

 

 

 

CONCIERTO / JIM HALL (CTI 6060 S1)

 

配置は、(左)サックス(中央)ギター、ピアノ、ベース、ドラムス、(右)トランペット。

 

「アランフェス協奏曲」で、トランペットやサックスは、中央のごく狭い範囲に位置し、60年代の分離のハッキリしたステレオ盤とは大違い、むしろモノラル盤に近い録音です。ただ最終章でのトランペットとサックスは、左右に広がり、ステレオ効果を発揮しています。DEAD WAXにRVG手書きサイン以外にVAN GELDER刻印。

 

 

全体的にCTIでは、ベースに加えドラムスも中央に位置するようになったため、BLUE NOTEのステレオより更にモノラルに近づいた印象です。

 

結局、RVGは、世の中の流れに反してモノラル録音に未練タラタラだったのでしょう。反論を恐れずに述べるならば、RVGは、ステレオ時代になっても、モノラル録音を極めることに執着していたのだと思います。

 

 

※  手持ちのステレオ音源が少ない中での検証のため、誤認があるかもしれません。ご容赦ください。