僅か2年程で倒産したTOM WILSONのTRANSITIONレーベルですが、モダンジャズ史上に大きな足跡を残しました。この希少レーベルとRVGの関係について

 

 

BYRD’S EYEVIEW(TRANSITION TRLP4)

 

付属のブックレット、右下部分を拡大しました。

 

A面のDEADWAXに手書きの「RVG」マークがあるため、長きに渡ってコレクターの間にRVG録音という誤った情報が伝わっていた盤 。(RVG刻印があり、BOOKLETが付いていない英ESQUIRE盤が流通していたせい?)付属のBOOKLETを見れば、録音はARNIE GINSBERGで、RVGは、あくまでREMASTERLING(含むラッカー・カッティング)を担当したということが一目瞭然です。B面にRVGマークが無いのは単純にラッカー・マスターに記入するのを忘れたためでしょう。SP盤がオリジナル音源のBLUE NOTE 1500番台のRVG刻印のMILES DAVISや MONKのLPも、録音はDOUG HAWKINSで、RVGは12インチLP化の際にREMASTERINGを担当しています。

 

では、TRANSITIONレーベルにはRVG録音は無いのか?というと

 

JAZZ IN TRANSION(TRANSITION TRLP 30)

 

 

付属のブックレット、右下を拡大、RUDY VAN GELDERの記載があるのが分かります。

 

TRANSIONレーベルの全貌を、オリジナル・アルバム未発表曲で紹介したオムニバス盤。SUN RAやCECIL TAYLOR、DONALD BYRDらに加えCOLTRANEの11分にも及ぶ「TRAIN’S STRAIN」が話題になりました。

 

この付属のBOOKLETのRECORDING ENGINEERSの欄に、前出のARNIE GINSBERGらと並んでRUDY VAN GELDERの記載があります。この7つの収録曲のうち、どれがRVG録音なのか?

 

消去法、並びにメンバー的に、COLTRANEの「TRAIN’S STRAIN」がRVG録音ではないかと思いましたが、この曲を含むアルバムは『CURTIS FULLER=PEPPER ADAMS SEXTET』(TRANSITION TRLP 8)として発売予定も立ち消え、1980年頃に、MICHAEL CUSCUNAの手によって、残りの2曲が『HI STEP/ PAUL CHAMBERS - JOHN COTRANE』(BLUE NOTE 451-H2)の中で漸く、陽の目を見ました。しかし、そこにはRVG録音との記載は無く・・・・・結局、どれがRVG録音なのか分かりません。

 

 

 

 

HERE COMES / LOUIS SMITH (BLUE NOTE 1584)

 

 

TRANSITIONが倒産し、親交のあったALFRED LIONが版権を買取り、BLUE NOTEで発売されたレコードです。DEADWAXにはRVG刻印がありますが、通常ジャケ裏、右下にあるRECORDING ENGINEERの記載がありません。ということはRVGはREMASTERING(含むラッカー・カッティング)だけなのでしょうか?

 

ところが、ジャズ批評社の「21世紀版 ブルーノート・ブック」に、このレコードは、1958年2月4日及び9日にHACKENSACKで録音と記載されているため、ややこしくなります。HACKENSACK=RVGなので、RVGは録音も担当?

 

しかし、いろいろと調べると、このジャズ批評の記載は間違いで「AUDIO SONIC SOUND、BRILL BUILDING、NEW YORK CITY」が正しい録音場所のようです。やはりRVGはREMASTERINGだけというのが正解でした。納得!