BLUE NOTE~PRESTIGE~RIVERSIDE~COLUMBIAと時系列的に聴いていくと、MONKの革新性は、徐々に失われ、RIVERSIDEの『BRILLIANT CORNERS』、『MONK’S MUSIC』あたりが、最後の輝きで、COLUMBIA時代のMONKに"SOMETHING NEW"を求めるのは、ちょっと辛いものがあります。でも中にはキラキラと輝くアルバムも・・・・。

 

 

IT’S MONK’S TIME(COLUMBIA CL 2184)

 

念願の大手レーベルCOLUMBIAと契約し、気合いが入っていたはずのMONK、しかし『MONK’S DREAM』や『CRISS –CROSS 』等の移籍直後のアルバムは、大半が過去の曲の焼き直しのため、新鮮味に欠けマンネリの誹りを受けるのも仕方ありませんでした。漸く本領を発揮し始めたのは1964年の、このアルバムあたりから。

 

冒頭の10分近くの「LULU’S BACK IN TOWN」、良く知られたスタンダードですが、このアレンジが斬新、この1曲でCOLUMBIAのアルバムの中でも最も愛着のある1枚になりました。タイトルはMONKがタイム誌の表紙を飾ったことに因んだもの。数年前、あの「文春」の表紙にMONKのイラストが描かれていて、その時、拙ブログで、このアルバムを取上げようとした(結局中止)ことを思い出しました。スタンダード2曲以外はMONK作でも馴染みの薄い曲のため、このアルバムに「マンネリ」の指摘は当たりません。ROUSEのテナーの音色も何時にも増して過激、ズバリ傑作です。

 

 

 

MONK.(COLUMBIA CL2291)

 

前作の好調そのままに、これも独自の世界を描くMONKの傑作。初出の曲は「THAT OLD MAN」と「I LOVE YOU」と「TEO」の3曲ですが、どれも素晴らしい出来で、特に前2曲が続くA面は感動ものです。他の焼き直しの曲もアレンジに工夫が見られ、それなりに新鮮です。さすが大手COLUMBIA、録音は抜群で、音がどうのこうのと言及する必要は全くありません。

 

 

 

UNDERGROUND (COLUMBIA CS 9632)


 

第二次世界大戦中のフランスのレジスタンスの地下室を精密に描いたジャケットが、ベスト・デザインとしてグラミー賞を獲得したことで話題のアルバムですが、中身にも挑戦的な姿勢が窺えます。ただ何とも残念なのは、ステレオ盤しか存在しないこと。ラストの「IN WALKED BUD」にはJOHN HENDRICKSのヴォーカリーズが入り、MONKがヴォーカルと共演するのはSP時代に無名のKENNY PANCHO(BLUE NOTE 1201)のバックを務めて以来です。他にも聴きどころは沢山ありますが、ステレオ盤のせいでCHARIE ROUSEのテナーが、か細くなったことは許容範囲としても、常時左チャンネルのLARRY GALESのベースが単調で、つまらないのにMONKやROUSEと同レベルの音量でマスタリングされているため、MONKのピアノに集中できないのは大いに問題です。プロデューサーは、いつもと同じTEO MACEROなので、エンジニアのTIM GREELANに問題があったのでしょうか?・・・楽器間のバランスを重要視していたRVG録音を見習って欲しかった・・・取上げた素材が良かっただけに残念です。話題のジャケットについても、似たような雰囲気のBOB DYLANの『THE BASEMENT TAPES』を先に見ていたので、特に目新しく感じることは、ありませんでした。COLUMBIA時代の佳作には違いありませんが、やや過大評価されていると思います。

 

 

 

ALWAYS KNOW(COLUMBIA C 35721~35722)

 

COLUMBIA時代を総括した全編、未発表曲による2枚組。CDでの再発時には、それぞれ追加曲として各アルバム収録されたと思います。レコードという芸術作品を作成するプロデューサーから見れば、曲の内容は良くてもアルバム全体を考えた場合、敢えて収録を見送った等の苦渋の選択もあったはずで、それを再発とは言え追加収録するのは、プロデューサーに対しての冒涜だと思います。なので、本アルバムのように、未収録曲だけで構成されたアルバムを発売してくれたことは称賛に値します。実際、内容も何故オリジナル・アルバムに収録されなかったのか、理由が分からない程、優れた演奏ばかりです。但し以前のレーベル時代の焼き直しが、ほとんどで、COLUMBIA時代のMONKの作曲能力は、さすがに枯渇していたことを物語っています。