PRESIDENT(大統領)と呼ばれた、LESTER YOUNGに演奏スタイルが、そっくりなためVICE PRES(副大統領)と呼ばれたPAUL QUINICHETTE。LESTERに師事したので確かに奏法は似ていますが、音色は全く違い、やや掠れた音で朴訥としたQUINICHETTEは、ブラインド・ホールド・テストでも確実に当てる自信があります。

 

COUNT BASIE楽団で活躍したQUINICHETTE、ソロになってから一番録音が多かったレーベルが、意外にもモダンジャズの雄、PRESTIGEです。

 

ON THE SUNNY SIDE / PAUL QUINICHETTE (PRESTIGE 7103)

 

朴訥で心が和むタイトル曲から、ウキウキする長尺のカリプソ「COOL-LYPSO」へと続くB面が聴きどころ。ニューヨークに進出し、レコードデビュー仕立てのCURTIS FULLERやJOHN JENKINS、SONNY REDら新進気鋭のモダン・ジャズメンを率いた楽しいセッションです。

 

 

 

 

FOR LADY / WEBSTER YOUNG (PRESTIGE 7106)

 

FOR LADYのLADYとは、もちろんBILLIE HOLIDAYのこと。HOLIDAYゆかりの曲でミディアム以下のやや暗めの曲で構成されています。WEBSTER YOUNGの物悲しいコルネットが、良い味を出していて、それを、そっと支えているQUNICHETTEのテナーは、決して主役より目立つことはありません。JOE PUMAのギターも良いアクセントになっています。PRESTIGE屈指の人気盤。

 

 

 

 

 

FOR BASIE (PRESTIGE 7127)

 

かつて在籍していたCOUNT BASIE楽団の面々との再会セッション。FREDDIE GREENEのリズム・ギターが入ると、もう完全に気分は中間派セッション。傍系レーベルのSWINGVILLEが発足したのも、このアルバムの成功があったのでは・・・と勝手に解釈しています。PRESTIGEが中間派に目を向けるようになったのには、モダン・ジャズメンと共演したQUNICHETTEの存在が大きかったと思います。上掲のアルバムの後に聴くと一気に時代が遡ったような錯覚に陥ります。

 

 

 

 

WHEELIN’ AND DEAKIN’(PRESTIGE 7131)

 

PRESTIGEお得意のリーダーレス・セッション、ほとんどにMAL WALDORONが参加していることから、MAL WALDORONが裏番として君臨、仕切っていた?何と言っても聴きものは3本のテナー、FRANK WESS(曲によってはフルート)、JOHN COLTRANE、PAUL QUINICHETTEによるバトルで、ジャズ初心者の頃は誰が誰だか分かりませんでしたが、さすがに今は簡単に聴き分け出来ます。

 

 

 

 

CATTIN’ WITH COLTRANE AND QUINICHETTE (PRESTIGE 7158)

 

7131番でCOLTRANEと共演した縁で・・・と思われがちですが、実は、こちらの方が4ヶ月早いセッション(1957年5月)。但し発売は1959年11月と2年半、お蔵入りしていました。COTRANEの大先輩を敬い、いつもより控えめな演奏が功を奏して、テナーバトルの一歩手前で、しっかりと協調した好感が持てるセッションになっています。特にミディアム・テンポのB面の2曲は聴きもの。あまり注目されていない盤ですが、個人的には大名盤だと思います。

 

 

上掲5枚、全ての録音・マスタリング(ラッカー・カッティング)はRVGが担当。但し肝心のPAUL QUINICHETTEが、かすれた音色でRVG録音の特性を活かしきれず、またLEE MORGAN、DONALD BYRD、FREDDIE HUBBARDのような強烈なキャラが、不在のため、「凄音」と呼べるような盤はありません。超有名盤は1枚もなくても上掲5枚は、いずれもPRESTIGEレーベルの「おいしい」処です。