1956年、HORACE SILVERが、DONALD BYRDやHANK MOBLEY、DOUG WATKINSを引き連れて分離・独立したため、メンバーを一新した時期のJAZZ MESSENGERSを誰が名付けたか「暗黒時代」と呼びます。

 

と言っても、JACKIE McLEAN、JOHNNY GRIFFINは一流だし、BILL HARDMANも、それなりに根強いファンを持っていて「暗黒時代」などと不名誉な名前を戴く理由は無いと思いますが、ピアノ(SAM DOCKERY)とベース(SPANKY DEBREST)が前任者と比べると明らかに格落ち、ここに問題がありました。

 

 

HARD BOP(COLUMBIA CL 1040)

 

ここから「暗黒時代」が始まります。くすんだ音色のBILL HARDMANのトランペットを輝かしい音色のCLIFFORD BOROWNやDONALD BYRDと比べるのは、かわいそうです。テクニック面でも前任者たちが偉大過ぎました・・・と私はHARDMANに対しては寛容な態度を取っていますが、現実には大きな差がありました。それに加えて見(聴)劣りするのがSAM DOCKERYのピアノ。出番が減ったことが一因で袂を分けたHORACE SILVERに対する当て付けでしょうか、SAM DOCKERYに、かなりのソロ・スペースが与えられています。でも、これが大失敗。DOCKERYもアルバムを重ねるごとに格段の進歩を見せますが・・・・。また安定したDOUG WATKINSからSPANKY DEBRESTにベースが替わったため、BLAKEY自身も、いつもよりドタバタと腰が据わっていないようなドラミングで前途多難を思わせる船出です。ただMcLEANは比較的好調、ファンなら入手すべきです。

 

 

 

DRUM SUITE(COLUMBIA CL 1002)

 

A面はタイトルどおりドラムやパーカッションの饗宴で、BLUE NOTEのBLAKEYのソロ・アルバム(ORGY IN RHYTHM、HOLIDAY FOR SKINS)を踏襲していて、しかも、ずっと聴きやすくなっています。BLUE NOTEのオリジナル盤は不人気なBLAKEYのソロ・アルバムでも高額なので、一桁以上安い、こちらをお薦めします。B面は上掲『HARD BOP』の「STANLEY’S STIFF CHICKENS」と同日録音、但しレコード番号を見ても分かるように、こちらが先に発売され、内容も優れています。一見こちらが『HARD BOP』の残り物のような印象ですが、逆です。先に入手すべきはこちらです。

 

 

 

RITUAL(PACIFIC JAZZ M-402)

 

このアルバムに収められている「SCOTCH BLUES」が大好きです。「SCOTCH BLUES」というより「SCOTCH MARCH」の方が正しいような・・・。『HARD BOP』に比べると、演奏も纏まってきてドタバタ感がなくなり、頼りなかったBILL HARDMANもSAM DOCKERYも安心して聴けるようになりました。ただ弱点を埋めようとしたのか?タイトル曲での延々と続くBLAKEYのドラム・ソロは、いただけません。また曲によって出来不出来の差が激しいように思います。エンジ色のレーベルは、PACIFIC JAZZからWORLD PACIFICへの移行時に2枚だけ使用されたもの。もう一枚は、BILL PERKINSの『JUST FRIENDS』(PACIFIC JAZZ M-401)です。レーベル面の「M」「Ⅳ」はMの400番台を意味するものでしょう。

 

 

 

 

THE HARD SWING / V.A.(WORLD PACIFIC JWC-508)

 

オムニバス盤ですが、上掲『RITUAL』の未収録曲「LITTLE T」が抜群の出来、どうしてオミットされたのか理由が分かりません。延々とドラム・ソロが続くタイトル曲(RITUAL)を外して、こちらを入れていれば『RITUAL』は、この時期のJMを代表するアルバムになったのに・・・と思います。ところでインパクトの強いジャケ、中央のサキソニストはMcLEAN?でもテナー・サックスの様だし別人?

                                                                                                                      以下次回に続きます。