ジャズを聴き始めた頃のアイドルはGERRY MULLIGANでした。PACIFIC JAZZを番号順に集めようと思ったのも、GERRY MULLIGANの存在があったからこそ。そのためバリトン・サックス=GERRY MULLIGANのイメージが出来上がっていて、PEPPER ADAMSの荒々しい音(実は多くのバリサク奏者の音、MULLIGANが特殊)には、当初は違和感すらありました。

 

PEPPER ADAMSのMODEやPACIFIC JAZZの初期のリーダー作は、本人が前面に出過ぎていて作品としては、面白くなく、むしろ一歩下がったサイドマンやCO-LEADER作にこそ、見るべきものがあるように思います。

 

 

 

THE COOKER / LEE MORGAN (BLUE NOTE 1578)

 

BENNY GOLSONに編曲を依頼した『LEE MORGAN VOL.2』(BLUE NOTE 1541)は、とっても新鮮でした。しかし『VOL.3』(同 1557)や『CITY LIGHTS』(同 1575)と続くと、さすがに鼻につくようになり、「もっとMORGANに自由に吹かせたら?」と思う方も多かったでしょう。そんなBENNY GOLSONの呪縛から逃れ、気持ちよくインプロビゼイションを繰り広げているのが本作です。ただMORGAN=ADAMSのフロント・ラインから想像するほどアクは強くなく、MORGANも8割程度の力で吹いているのか余裕綽綽、それに呼応するかのようにPEPPER ADAMSも控えめに対応していて好感が持てます。下掲のDONALD BYRDが力の限り、目一杯、吹きまくっているのとは対照的です。

 

 

 

 

OFF TO THE RACES / DONALD BYRD (BLUE NOTE 4007)

 

BYRDとPEPPER ADAMSのコンビだけでも十分ヘヴィーなのに、JACKIE McLEANまで加わるとTOO MUCH!に感じる事も。既に他レーベルにLEADER、CO-LEADER作を何枚も吹き込んでいたBYRD、満を持してのBLUE NOTE第一作です。TOO MUCHに感じるのは、上掲のMORGAN=ADAMSを意識していたのでしょう、明らかに気合いが入り過ぎています。PEPPER ADAMSのバリサクも、BYRDに煽られてゴリゴリ感が凄く、腹に響く轟音です。これを本領発揮と評価する方もいるかもしれませんが、一つの作品として見た場合、一部の曲での空回り感は拭えません。

 

 

 

 

THE PEPPER-KNEPPER QUINTET (MRTRO JAZZ E1004)

 

アクの強いトロンボーン奏者、JIMMY KNEPPERとの双頭グループ。リズムセクションは、WYNTON KELLY、DOUG WATKINS、ELVIN JONESと充実しています。特にKELLYの活躍は目覚ましく、どう聴いても爽やかさとは、かけ離れた鈍重なフロント二人と対照的な煌びやかな音色でセッションを盛り上げています。有名盤ではありませんが意外な拾いものの1枚。特に素晴らしいのがELLINGTONの2曲「ALL TOO SOON」と「I DIDN'T KNOW ABOUT YOU」で、後者では珍しくKELLYがオルガンに挑戦、これが新鮮で素敵です。

 

 

 

 

 

MOTOR CITY SCENE (BETHLEHEM)

 

また出してきたと思われるでしょうね。でも外すわけにはいかないのです。このレコード、25年も前から所有しているのに、ずっとLEADER-LESSかDONALD BYRDのアルバムだと思っていました。冒頭の「STARDUST」のトランペット・ソロが目立ち過ぎるため、そう思い込むのも仕方ないよね・・・と間抜けな自分を慰めています。でもバリサクという楽器の音色からして、このアルバムのように一歩下がった方が、間違いなく良質なアルバムが生まれると思います。

 

 

 

 

 

PEPPER ADAMS PLAYS THE COMPOSITIONS OF CHARLIE MINGUS(WORKSHOP 219)

 

タイトルどおりMINGUS曲集。 PEPPER ADAMSのリーダー作ながら、録音のせいか、バリサクが「ゴリゴリ」と荒々しい、いつもの音ではなく、かなり滑らかな音色です。共演のTHAD JONESにも、いつもの暑苦しさが感じられないことからも録音の違いが鮮明です。全9曲はちょっと多く、インプロビゼイション部分を、もっと充実させて6曲くらいに絞った方が良かったと思います。MINGUSグループのDANNY RICHMONDがドラムスを担当、MINGUSの替わりのPAUL CHAMBERSも存在感を示し、お膳立ては十分でしたが、肝心のPEPPER ADAMSのプレイにMINGUS MUSICの重要な要素である「怒り」を感じられるのが、「HAITIAN FIGHT SONG」の後半部分くらいなのは残念です。このアルバムに限ってはPEPPAR ADAMSの特長である「ゴリゴリ」とした轟音を鳴り響かせて欲しかったのですが・・・・なかなか、こちらの思うようには、いきませんね。

 

 

*DONALD BYRD=PEPPER ADAMSについては過去にも取上げています。

お暇な時にでも、ご覧ください。