モダンジャズの帝王MILE DAVISの足跡を辿る時、避けては通れないGIL EVANSとのコラボレーション。総括してみます。

 

「BIRTH OF THE COOL」(CAPITAL T762)

 

ISRAEL / BOPLICITY (CAPITAL 57-60011)、オリジナルのSP盤の一枚、流石に迫力ある音です。CAPITALはAESカーブでOK。

 

MILESとGIL EVANSの関係を述べる時には、最初に触れなければならない『クールの誕生』と命名されたGIL がGERRY MULLIGAN、JOHN LEWISとアレンジャーを務めたMILESのリーダーセッションです。

 

1949~1950年の録音(SP)を1957年になってMILES DAVIS人気にあやかってLP化したアルバム。当時、このLPを聴いた方は「WEST COAST JAZZ?」と思ったことでしょう。編曲中心でWEST COASTの一部ミュージシャンへの影響が窺えますが、1957年のニューヨークはハード・バップ全盛で熱く燃えていた時期、そんな時期に「クールの誕生」などと昔を振り返られても・・・・。ただ『MILES AHEAD』以下のGILとのコラボの下敷きになっていたことは間違いありません。選曲も含め、ある程度、長くジャズを聴いてきた方には楽しく聴けるアルバムです。

 

 

 

MILES AHEAD(COLUMBIA CL 1041)

 

今でこそ、名盤、重要作としての評価の高いアルバムですが、発売当時は実際のところ、どうだったのでしょう?MILESはTHIRD STREAM MUSIC (ジャズとクラシックとワールド・ミュージックの融合)を標榜していたと言われていますが・・・・・野心家のMILESとしては、明らかにモダンジャズ・ファンだけではなく、もっと幅広い層をターゲットとしていて「俺の音楽はモダンジャズではなくMILESミュージックだ」とでも思っていた?・・・・それまで、熱心にMILESを追いかけて来たモダンジャズ・ファンの反応は?多分「なんじゃ、これは!」と大いに落胆したように思います。

 

COLUMBIA側も、これはモダンジャズとは認識しておらず、ポピュラー層を取り込むため、「白人美女とヨット」のジャケットにしたところ、MILESがクレームを付けたようですが、この爽やかなジャケットメジャー・レーベルの大々的な宣伝があったからこそ、レコードはヒットしたのだと思います。一聴『PORGY AND BESS』や『SKETCHES OF SPAIN』のようなポップさ、はありませんが、聴きごたえがあり、聴き込めば聴き込む程、愛着が湧いてくる1枚。

 

 

 

PORGY AND BESS(COLUMBIA CL 1274)

 

GILL EVANSとのコラボの中では、ダントツに聴きやすい作品。ジャズ素人にもトランペッターMILESを受け入れてもらえるようにとの努力の跡が窺えます。それは『MILES AHEAD』の選曲が、やや地味で、良くも悪くも仰々しいアレンジが目立ったのに比べ、こちらは誰でも知っている人気オペラを題材に取上げたことに加え、オーケストラを前作に比べ控えめにして、MILESの存在をより強力に浮かび上がらせることに成功していることでも分かります。結果、MILESの希望どおり広い層に受け入れられ、溜飲を下げたと思います。

 

このアルバム、かなり売れたのでしょうね。その反動か、6EYESのオリジナルの中古盤、今でもホントに良く見かけます。

 

 

SKETCHES OF SPAIN(COLUMBIA CL 1480)

 

MILESとGILのコラボの集大成、頂点を極めた作品。明らかにMILESの狙いがジャズ・ファン以外をも取り込もうとしているのが、より鮮明になりました。『KIND OF BLUE』に「FLAMENCO SKETCHES」という曲がありますが、その時点でSPAINを題材としたものを構想していたのでしょうか?

 

『SKETCHES OF SPAIN』については、以前に取上げているので、そちらを参照ください。

https://ameblo.jp/noriten226/entry-12585825274.html

 

 

 

 

QUIET NIGHTS(COLUMBIA CL 2106)

 

承諾していないのに発売されたことにMILESは激怒したようですが、目指していたのがTHIRD STREAM MUSICなら、これほどピッタリのものは無いように思います。取上げている題材が時代に迎合したBOSSAだし・・・。両面合わせて27分弱(しかも6分のカルテット・セッション含む)なのは、まだ製作途中だったのでしょうが、下手な曲で時間調整するより、簡潔で良いと思います。

 

MILESの目指していたTHIRD STREAM MUSICとは、本人は否定するでしょうが、「難解なムード・ミュージック」、「聴きごたえのあるイージー・リスニング」であったように思います。

 

いろいろと、いちゃもんを付けましたが、『MILES AHEAD』以下の4枚はどれも愛聴盤。但し普段聴いているジャズとは一線を隔した音楽として聴いています。

 

それにしても、さすがCOLUMBIA、メジャー・レーベルだけあって、やれ録音が、どうとか、マスタリングが、どうしたとか、どこの工場で製造されたとかは、全く気にする必要は全くありません。INDEPENDENTレーベルとの差は歴然ですね。