トランペッターなら一度は挑戦したいワンホーン・カルテット、でも、それは想像以上に難しいようで、名手でも一度だけのことが多いようです。

 

 

CANDY / LEE MORGAN (BLUE NOTE 1590)

 

トランペットのワンホーンとして、まず思い浮かぶのが、これ。国内盤からオリジナル盤に買い替えたのは、20年以上前ですが、実はあまり聴いていません。ここには斜に構えた眼光鋭い、いつものMORGANはおらず、礼儀正しい優等生の猫を被っています。私が好んで聴くのはWAYNE SHORTERとフロントを張っていた時期の JAZZ MESSENGERSとか『LEE WAY』あたりです。

 

『CANDY』はデビュー以来、走り続けてきたので「一息入れよう」とか「CHANGE OF PACE」的なもの、COLTRANEの『BALLADS』と同趣向と考えた方が良いでしょう。驚くのは「ワンホーン」ということで肩に力が入るのが普通なのに若干19才!のMORGANには緊張など微塵も感じられないこと。

 

RVG録音ですが、SONNY CLARKのピアノもDOUG WATKINSのベースも「もわっ」とした音でキレが無く、MORGANの脳天を突き抜けるような鋭さも、当然ながら、この盤では感じられません。昔からLEE MORGANの代表作と言われ続けていますが、評価は、するものの個人的には他に挙げる盤が多数あるのに・・と思っています。

 

 

BYRD BLOWS ON BEACON HILL(TRANSITION TRLP 17)

 

付属のBOOKLETの一部

 

ベースのDOUG WATKINS以外は無名(ピアノ RAY SANTISI、ドラム JIM ZITANO)でもBYRDは、しっかりと感情を込めて吹いていて、格落ちメンバーのマイナス分を補っています。全6曲のうち2曲はピアノトリオの演奏で、それが逆にBYRDのトランペットを引き立たせる結果となりました。

『CANDY』より、こちらの方が音の輪郭がはっきりしている好録音、TRANSITIONという超マイナー・レーベルでなければ、もっと評価が高かったに違いありません。ずばり傑作だと思います。

 

この頃、CLIFFORD BROWNの後継者争いでLEE MORGANに追い落とされたBYRDでしたが、ワンホーン・アルバム対決?ではMORGANを制しました。

 

 

CLIFFORD BROWN QUARTET(BLUE NOTE 5047)

上掲2人の目標であったBROWN、唯一のワンホーンは10インチです。

 

さすがのBROWNもワンホーンのため肩に力が入り過ぎているのが手に取るようにわかります。しかも渡欧時の現地ジャズメン(ピアノはHENRI RENAUD)がバックで、ほとんどソロを取らず、BROWNは吹きっぱなし状態。その分、聴き手はBROWNを堪能できますが、これではBROWNがシンドイ。結果10インチだったのが幸いしました。それでも全てのトランペッターのワンホーン作品の中で、これがベストだと思っています。

 

残念ながらオリジナルの仏VOUGEではなく英国盤(同デザイン)です。

 

オリジナルのVOGUEのデザインよりBLUE NOTEのジャケットの方が素敵です。

 

以下次回に続きます。