他にも「JORDU」「SCOTCH BLUES」「FLIGHT TO JORDAN」等の名曲があるにも拘らず、DUKE JORDAN = 危険な関係(NO PROBLEM)と条件反射的に結び付けてしまうのは、映画のテーマ曲として大ヒットし、その後、何度も録音を重ねているからでしょう。

 

LES LIAISONS DANGEREUSES / ART BLAKEY’S JAZZ MESSENGERS AVEC BARNEY WILEN (FONTANA 680.203)

 

EP盤( FONTANA 460.660)NO PROBLEM、PRELUDE IN BLUEの各2VERSION、但しEDIT

 

1960年公開のフランス映画「危険な関係」、JAZZ MESSENGERSの他にもMONKの曲が流れたりKENNY DORHAMが登場したり、モダンジャズが隆盛を極めていた時代を象徴する産物です。

 

自分の作った曲が大ヒット映画のテーマ曲として採用されれば、もう印税で一生暮らせる・・・・・現在のように著作権が、しっかりとガードされている時代ならともかく、1950年代後半は、いい加減でDUKE JORDAN作のテーマ曲「NO PROBLEM」がJACK MARRAYなる人物の作となっていてJORDANは印税を手にすることはできませんでした

 

 

FLIGHT TO JORDAN(BLUE NOTE 4046)

 

1960年8月の録音、バップ初期から活躍し、この時点で既に38才JORDANのBLUE NOTE唯一のアルバム。時代は新主流派が台頭してくる前夜に当たり、ギリギリ間に合った感じ、半年遅れていたらアルフレッド・ライオンは「お蔵入り」にしていたでしょう。新進気鋭のSTANLEY TURRENTINEとDIZZY REECEのフロントが新鮮で一味違ったハードバップが楽しめます。これもRVG録音の凄さを体験できる一枚で、今回取上げた他のアルバムとの音圧の差は圧倒的。「NO PROBLEM」は録音時、既に大ヒットしていたと思われますが、版権でのトラブルで泣く泣く?「SI-JOYA」とタイトルを変えて演奏、無念さが伝わってきます。

 

 

LES LIAISONS DANGEREUSES / COMPOSED AND CONDUCTED BY DUKE JORDAN (CHARLIE PARKER PLP-813-S)

これはレイター・プレス、オリジナル盤ではありません

 

それでも「NO PROBLEM」の著作権のことが余程悔しかったのか、2年後の1962年に『LES LIAISONS DANGEREUSES(危険な関係)』を自身のリーダー・アルバムとしてJAZZ MESSENGERSのサントラと全く同じアレンジでレコーディング。メンバーはCHARLIE ROUSE、SONNY CORN、ART TAYLORらハード・バッパーの一流どころを集結、本人を含め演奏自体は悪く無いどころか、素晴らしいと思いますが、封切り直後ならともかく2年も経ってから再演したところで・・・・新鮮味に欠け全く売れませんでした。その辺りを考慮して聴いてみても、相手はBARNEY WILENを含む最強MESSENGERS、そもそも勝ち目はありません。今度こそ印税で・・・と思っていた目論見も水泡に帰すことに。

 

 

 

このあとタクシー運転手などの仕事をし、10年近くレコーディングから遠ざかりましたが、70年代中頃に復帰、STEEPLECHASEに吹き込んだ一連のアルバムで、かつてないほどの脚光を浴びることになります。特に「NO PROBLEM」を含む下掲の『FLIGHT TO DENMARK』は何度もプレスを重ね、ようやく安定した印税が・・・めでたし、めでたし。

 

 

FLIGHT TO DENMARK(STEEPLECHASE SCS-1011)

 

BRUCE COCKBURNの『HIGH WINDS、WHITE SKY』とともに「冬」「雪」のジャケットとしては双璧。今ではDUKE JORDANを1枚と言ったら、これを挙げる方が多いのではないでしょうか。冒頭の「NO PROBLEM」~「HERE’S THAT RAINY DAY」~「EVERYTHING HAPPENS TO ME」と続く流れが最高で、この音楽に、ずっと身を委ねていたいと思います。特に、この「NO PROBLEM」は哀愁を帯びたJORDANの特徴が良く出ていて同曲の最高のバージョンだと思います。

 

このSTEEPLECHASEの録音はSTEREOですが、ベースとドラムが中央(ピアノは左手前)にあるせいかMONO盤を聴いているような雰囲気を持っていてモノラル絶対派にとって嬉しい録音です。