先日、眼医者に行った時のこと。待合室には消音された「トムとジェリー」のDVDが流れていて、思わず見入ってしまいました。「トムとジェリー」と「ポパイ」は米国産のとても良くできたTV漫画で、小学生の頃にはテレビに齧りつき夢中になって見ていました。そして幼心にも「外国の漫画は違うなぁ~」と思ったものです。

 

さて、ジャズのレコード・ジャケットの世界にも、日本人には絶対に描けない米国の漫画家がデザインした作品があります。

 

DON MARTIN、のちにMAD(1950年代からあるコミック雑誌)の仕事で有名になりますが、まだ無名に近い頃にPRESTIGE 7000番台のジャケット・デザイン5枚を担当します。ジャケットには小さくD.MARTIN(もしくはDON MARTIN)のサインが入っています。レコードの発売時期から1955~1956年頃の作品と思われます。

 

 

THE BROTHERS(PRESTIGE 7022)

 

PACIFIC JAZZを、せっせと蒐集していた時期にGERRY MULLIGANの『THE GERRY MULLIGAN SONGBOOK VOL.1』(WORLD PACIFIC RECORDS STEREO-1001)が好きだったこともあり、同じような構成の白人サックス陣の共演は垂涎の的でした。ある時OJC(ORIGINAL JAZZ CLASSIC)から、このアルバムが、再発されることを知り、嬉しくて某有名組合系ショップに予約を入れました。生まれてこの方、レコードの予約を入れたのは、この時一度だけ、それだけ入手したかったレコードでした。でも聴いてみたら音が悪くてガッカリ。それからRVGがリマスターした掲載盤を入手も、A面はイマイチ(B面は良好)、さらに10インチ、SP盤まで遡ってみたものの、元の録音自体「モゴモゴ」していて良くないのです。元が良くないものはRVGがリマスターで頑張っても所詮、限界があります。とは言えFOUR BROTHERSならぬFIVE BROTHERS(5人のテナー奏者)の競演は聴きもの。どうしても欲しかった理由に、ジャケット・デザインがあったのは言うまでもありません。この人物、なんとなく「クレヨンしんちゃん」のボーちゃんに似ているような・・・。

 

 

TROMBONE BY THREE / J.J.JOHNSON、KAI WINDING、BENNY GREEN(PRESTIGE 7023)

 

これも秀逸なジャケット、明らかに手塚治虫さんも影響を受けているように思います。でも3人のトロンボーン奏者の、それぞれのリーダー・セッションを集めた本作はコレクターに人気がなく、昔からPRESTIGE 7000番台の廃盤としては格安でした。

 

3つのセッションの中ではKAI WINDINGのセッションが、GERRY MULIGANの活躍もあり、卓越した演奏で轟音と言っても良いくらい、ずば抜けて音が良く、トロンボーンのリーダー・セッションからは、のんびりした印象を受けがちですが、これは、結構ハードなセッションです。J.J.JOHNSON、BENNIE GREENのセッションもオリジナルはSP盤。10インチLP化もされていますが、盤の材質(ペレット)に問題があり、確実にサーフェイス・ノイズが発生しますので、RVGがリマスタリングをした12インチの本盤をお薦めします。

 

 

 

SONNY STITT-BUD POWELL-J.J.JOHNSON(PRESTIGE 7024)

 

このアルバムを所有している方は、素晴らしい音質に十分満足されていると思いますが実は元となるSP盤、10インチが奇跡的に抜群の音質で、サーフェイス・ノイズも、ほとんどありません。RVGのリマスタリングも元になる録音次第だということが改めて分かります。

 

ご存知のように表記の3人が一緒に演奏しているわけではなく、STITT‐J.J.とSTITT‐POWELLの2つのセッションを抱き合わせたもので、甲乙付け難い素晴らしい内容だと思います。ところで、この怪しい鳥の大群?微妙に表情が違っていて見ていて飽きません。このジャケ「PRESTIGE 7024」が上に来るのが正しい向きだと思いますが、するとレコード出し入れ口が上になって・・・・。

 

 

MILES DAVIS AND HONES(PRESTIGE 7025)

 

へっぼこ・コレクターなため本盤を今日まで蒐集できず、画竜点睛を欠く結果となってしまいました。原因は同盤のUK盤(DIFFジャケ)を早くに入手したためで、そのUK盤も断捨離で処分済み。もっともSP盤や10インチは所有しているので、今さら高額を払って7025番を入手する気は全くありません。ところで、このアンドロイドの集団はマラソンしてる?(画像はネットから拝借)

 

 

 

THE ART FARMER SEPTET(PRESTIGE 7031)

 

ジャケ裏に”REMASTERD BY VAN GELDER”の表示が無いので「もしや?」と思いましたが、レーベル面にしっかり表示があり、両面DEAD WAXに手書きの「RVG」刻印もありました。歌って踊れる「AFRODISIA」系の「TIA JUANA」「MAU MAU」が入っていて、もっと一般的な人気が出ても良い盤だと思います。

 

SP盤や10インチ(ともに所有しています)では、少なからずサーフェイス・ノイズに悩まされますが、RVGのリマスタリングでクリアな音で聴けるようになったことに、当時のジャズ・ファンは驚嘆したでしょうね。ただSP盤では迫力ある太い音に録られていたのが随分と線が細くなっています。描かれている不気味な動物は「猿」?斬新なデザインのジャケットは秀逸です。

 

 

 

ジャズ・レコードのジャケットでは若き日のANDY WARHOLの作品が有名で、アメリカではオリジナル・ジャケに高額が付いていますが、それに比べるとDON MARTINの知名度は・・・・。作品は決して引けを取らないと思いますが、ちょっと斬新すぎたのでしょうか?・・・・いつの日かブレイクすることを期待しています。

 

結局、このシリーズはDON MARTINのジャケット・デザインより、RVGのリマスタリングの素晴らしさを広く知らしめることになりました。