ルディ・ヴァン・ゲルダー(RVG)が12インチLP化の際にリマスタリングを行ったPRESTIGEやBLUE NOTEのSP盤、10インチLPについては過去に何枚か検証しましたが、RVG以外でSP、10インチ、12インチLPと揃っているものは殆どありません。掲載盤を所有している理由は、もちろんTHELONIOUS MONKが参加しているからで、しかもCHARLIE PARKER、DEIZZY GILLESPIE、CURLY RUSSELL、BUDDY RICHと夢の組合せです。
BIRD AND DIZ (VERVE MG V-8006)
10インチが12インチLP(以降、単にLPと表記します)に移行する段階で、「今後はLPの時代が来る」と察し、多くの売れ筋の10インチはLP化されました。しかし単に10インチをLP化すると時間調整が難しく、2 IN 1にすると収まり切らず、曲を削る必要に迫られ、1枚だと時間が大幅に余り、別テイクを入れて時間調整を行いました。最も有名なのがBUD POWELLの「UN POCO LOCO」の3TAKE(BLUE NOTE 1503)です。
別テイクが5曲、「LEAP FROG」は3連発
この時期(1950年)のMONKは既にBLUE NOTEに世紀の録音の大半を終えており、絶好調の時期。但しここでは、あくまでも主役はPARKERとGILLESPIE、またオリジナルはSP音源のため、1曲自体の演奏時間が短いこともありピアノ・ソロのスペースは充分ではありません。でもMONKと一発で判るMILESを怒らせた、あの不協和音?のコンピングが随所で聴けます。BUDDY RICHをミス・マッチとの評論がありましたが、彼はPARKERの前では、ちゃんと弁えていてオーバー・ドラミングにはなっていません。1曲1曲は、とても素晴らしい内容だと思いますが、別テイクといえども同じ曲を続けられると、さすがに作品としての価値、聴後の満足感に疑問を抱きます。
BIRD AND DIZ (MERCURY MG C-512)
LP化に際し述べたことはSP盤を10インチで再発する際にも起きています。しかも・・・DAVID STONE MARTINの特長あるジャケットを使いながら、酷い作品です。というのはSP3枚分、計6曲だけでは10インチの演奏時間を満たさないため、全く別のセッションを各面に1曲づつ追加しています。しかも『BIRD AND DIZの』タイトルを掲げながら、追加曲にはPARKERこそ居るもののトランペットはKENNY DORHAM、しかもリズム・セクションは全員が別人というお粗末さ、これは愚行としか言えません。演奏内容も、他の曲に比べると格段に落ちていて全く入れる必要がなかった、というより入れるべきではなかったと思います。
オリジナルSP盤(11058、11076、11082)
11058「BLOOMDIDO」のB面は「MELANCHOLY BABY」、11076「LEAP FROG」のB面は「RELAXING WITH LEE」
11082「MOHAWK」のB面は「AN OSCAR FOR TREADWELL」
オリジナルのSP音源3枚。SP盤で聴くと1曲1曲の素晴らしさ、正に3分間の芸術を十分に堪能できます。MERCURY、CLEFは10インチ、SP盤ともAESカーブ、TREBLE1時方向、BASS10時方向への音質調整でEQカーブに対応可能です。
MERCURYのSP盤はサーフェイス・ノイズもなく、音も鮮やかさで抜きんでいます。10インチやLPとは聴後の満足感が違います。また10インチとLPの音の差は、ほとんど感じませんでした。
お薦め順はSP、12インチ、10インチの順、特に10インチは上掲理由からお薦めできません。
最後にケチョン・ケチョンに貶した10インチ追加曲、オリジナルのSP盤が手元にありますので載せておきます。
11022「PASSPORT」、B面は「VISA」
PARKER以外はKENNY DORHAM、AL HAIG、TOMMY POTTER、MAX ROACH(B面にはトロンボーンとボンゴが追加)とメンバーは豪華。但しタイトルは「VISA」に「PASSPORT」、この何とも安直なネーミングからも演奏の内容が想像できます。録音もMONKの入ったセッションに比べると曇った感じで良くありません。