TOOTS THIELEMANSのハーモニカとかDOROTHY ASHBYのハープなど、モダン・ジャズでも「えっ!」と驚くような、いろいろな楽器が使われています。しかも上記2人はリーダー・アルバムも録音、当然リード楽器として長いソロを取っていて驚かされます。

 

金管楽器のなかで最も大きく、最も低音を出すチューバ(TUBA)もジャズに使われています。学生時代に吹奏楽クラブでチューバを吹いていた方には失礼を承知で言いますが、「モゴモゴ」とキワモノのイメージしかなく、どう考えてもジャズには不向きだと思うのですが・・・。

 

私も、好き好んでチューバを追いかけたのではなく、贔屓のJACKIE McLEANのリーダー作を順次、聴いていくうちに、ぶち当たりました。

 

JACKIE McLEAN & CO.(PRESTIGE 7087)

 

サブ・タイトルとしてINTRODUCING RAY DRAPER & TUBAとあるように、チューバの新人RAY DRAPERのデビュー作で、3曲に起用されています。なんと弱冠17歳。チューバのソロは理解しがたいものがありますが、そのあとにMcLEANの鋭いソロが続くと「どんよりとして真っ黒な雲が立ち込めた空から突然光る稲妻」のような効果があります。チューバが加わることでハーモニーに重厚さが増すことも利点です。一聴、物凄く地味な感を受けますが、こういうレコードこそ、聴き込む程に味わいが増します。効果的にチューバを使った成功作と言えるでしょう。

 

 

TUBA SOUNDS / RAY DRAPER QUINTET (PRESTIGE 7096)

 

同じINTRODUCING組でもBILL HARDMANはPRESTIGEでリーダー作が無かったのに対しRAY DRAPERは早くもリーダー作を録音します。そして、ここでもINTRDUCING WEBSTER YOUNGと新しいトランペッターが紹介されています。共にMILES DAVISの系譜で音色も良く似ています。スロー・バラードで見られるWEBSTER YOUNGの深い陰影のある演奏は、のちの名作FOR LADY』を思い起こさせます。ベースとドラムは前作に比べ格落ちながらMcLEAN、MAL WALDRONと主要メンバーが同じなので姉妹アルバムのような雰囲気です。RAY DRAPERのチューバ・ソロは、あくまでもMcLEANを引き立たせるためのお膳立てとして聴くべきです。リズム・セクションが弱い分、上掲盤の方が優れていると思います。

 

 

THE RAY DRAPER QUINTET (NEW JAZZ 8228)

 

FEATURING JOHN COLTRANEとあるように、それまでがトランペット、アルトサックスと音の高低差がある楽器との共演だったのに対し今回はCOLTRANEが相手、でもCOLTRANEもテナー奏者としては高音を多用するのでメリハリは感じます。RAY DRAPERの名前を一躍有名にした名曲「FILIED」は、これが初出(但し有名なのは下掲 FAT JAZZ収録の演奏)です。NEW JAZZは何らかの事情でPRESTIGEがリアルタイムで発売できなかったもの(お蔵入り)を3年後くらいに発売したレーベルですが、多分7096番の売上が悪く、このアルバムの発売に際し二の足を踏んだのでしょう。B面は良く知られている曲を並べ、アピールしていますが・・・・。上掲盤でのMcLEANも凄く目立ちましたが、このアルバムでのCOLTRANEも一際、目を惹きます。「モゴモゴ」の後だと、やっぱり目立ちます。最後の曲はCOLTRANEが抜けQUARTETに、チューバの一人舞台は・・・・やっぱり無理がありました。

 

 

 

FAT JAZZ / JACKIE McLEAN SEXTET (JUBILEE JLP 1093)

 

再びMcLEANの作品に参加。McLEAN、WEBSTER YOUNG、に上掲NEW JAZZ盤で共演したGIL COGGINS(ピアノ)、LARRY RITCHIE(ドラムス)と同じメンバーばかりで新鮮味はありません。RAY DRAPERは名曲「FILIDE」の他に同じくNEW JAZZで取上げた「TWO SONS」を提供しています。PRESTIGEのRVG録音に比べるとMcLEANのアルトに鋭さが足らず、チューバとの対比も抑えられる結果となりました。内容が良いだけに惜しいと思います。

 

RAY DRAPERは、もう一枚COLTRANEとの「A TUBA JAZZ」(JUBILIE)を録音後、BOOKER LITTLEが在籍した頃のMAX ROACHグループで活躍します。

 

チューバは、ハーモニーを付けるのには良いけれど、ソロ楽器としては、やはり不向き。第2のRAY DRAPERが出てこなかったのは、当然のことでしょう。