NEW SOIL (BLUE NOTE 4013)

レーベル面にレジスター・マーク無し、溝無し、耳ありのセカンド・プレス。レジスター・マーク付きの「溝あり」が存在するので注意。それはサード・プレスです。

 

1959年、JACKIE McLEANはBLUE NOTEと専属契約を結びます。それまでのPRESTIGEとの一番の違いはレコーディングに対して十分なリハーサルの時間を与えられたことでした。ジャケ裏の解説には「BLUE NOTEはリハーサルの時間をくれた。十分な時間があったので、素晴らしい音楽ができた。何度もスタジオに出入りし5週間かけて、このアルバムを作り上げた(概略)」と記載されています。PRESTIGEでは簡単な打ち合わせの後、ほぼ一発取りに近いレコーディングだったことを考えると夢のようなことでした。しかもリハーサルの際もBLUE NOTEでは手当が支払われたことも驚きでした。BLUE NOTEの資金が、少なくともこの頃までは潤沢だったのは偏にJIMMY SMITHというドル箱を抱えていたからです。

 

ブローイング・セッションが多かったPRESTIGEからBLUE NOTEに移って、十分過ぎる時間を与えられたので、アルフレッド・ライオンやRVGとも綿密な打ち合わせを行って完璧な作品を作り上げたかったMcLEAN。時間を掛けて作り上げた作品は、確かに音も演奏も申し分ないと思いますが、(それまでとは違うことをやろうと)いろいろ考えすぎたのか、またスタンダードが一曲もない選曲のせいか、ちょっと頭デッカチな作品(特にA面)に仕上がり、他のMcLEANのリーダー作と比べると評価は高くありません。少なからず即興性を重視するジャズにおいては、必ずしもリハーサルを重ねれば良い結果が出るとは限らない良い例かもしれません。ただ個人的には、これだけ完璧な音作りは、当時のBLUE NOTEでのみ可能になったと思いますし、渋めの内容は、聴き込めば聴き込むほど味が出て魅力的です。

 

 

DAVIS CUP (BLUE NOTE 4018)

 

『NEW SOIL』にピアニストとして参加しB面の3曲を提供していたWALTER DAVIS Jr.のリーダー・アルバム。DONALD BYRD、McLEANも参加しているため良く似たサウンドに仕上がりました。全曲WALTER DAVIS Jr.の作品。A面最後のMcLEANを外したバラード「SWEETNESS」が、とても良いチェンジ・オブ・ペースになりアルバム1枚を飽きることなく聴かせてくれます。哀愁漂う名曲「MINOR MIIND」の存在も大きく、結果、皮肉にも『NEW SOIL』より人気盤となり「ハード・バップの名盤」の座を得ています。RVGの録音も『NEW SOIL』に比べると、明らかにピアノが目立つようなマイクのセッティングをしていることがはっきりと聴き取れます。HORACE SILVERライクなWALTER DAVIS Jr.のピアノは高音を多用しないため、ピアノの録音が苦手と言われるRVGでも良好に録れていると思います。

この時点ではMONKや SILVERのようなピアニスト兼作曲家になることを期待された若手でしたが、時代の流れが早く、かないませんでした。

 

SWING SWANG SWINGIN’ (BLUE NOTE 4024)

 

『NEW SOIL』が全曲オリジナル曲で、取っ付きにくかった反動か、ポピュラーな選曲ワンホーンに構成を変えました。一曲目の「WHAT’S NEW」の最初のフレーズを聴いただけで「これだよ、これ」と思わず相槌を打った方も当時は多かったと思います。全編に渡って説明不要の、良くスウィングするMcLEANが堪能できます。

『NEW SOIL』で、ちょっと無理して違うことを、やり過ぎた後に揺り戻しが来た感じで、この後McLEANは、同じような試行錯誤を繰り返しながら、次第に先鋭化していきます。

 

このアルバムは、BLUE NOTEならではの完璧な作品で、いつの時代にも安心して楽しめる素晴らしいハード・バップ作品です。

 

3枚続けて聴くと、如何に当時のBLUE NOTEが時間と費用を掛けて丁寧な音作り、アルバム作りをしていたことが分かります。BLUE NOTEが最も輝いていた時期でした。

 

最後にMcLEANのシングル盤を紹介します。BLUE NOTEでのシングルは、この2枚のみ。上掲盤からのシングル・カット、もちろんRVG刻印が、あります。

45-1776 GREASY PART1&2 (NEW SOILより)、45-1760 WHAT'S NEW / 116TH & LENOX (SWING SWANG SWINGIN'より)