1956~57年はSONNY ROLLINSの絶頂期、リーダー、サイドマンとして数多くの録音を残し多忙を極めます。中には2日連続での録音もありました。ROLLINSの演奏には大差ありませんが、プロデューサー、レコーディング・エンジニアの差がアルバムの完成度にも大きく影響を及ぼしました。

 

1957年11月3日

A NIGHT AT THE VILLAGE VANGUARD(BLUE NOTE 1581)

 

このアルバム、「ジャズ批評」のブルーノート総選挙で2位(ちなみに1位はSOMETHIN’ ELSE、3位はCOOL STRUTTIN’)になっていますが結構、好き嫌いが、分かれるのではないでしょうか。1位、3位が万人向きなのに対し、これはライブの醍醐味が味わえる半面、アドリブの洪水しかもピアノレスのため、ジャズ初心者には、ちょっとキツイかと・・・。

 

当初、アルフレッド・ライオンは、WYNTON KELLYを加えたカルテットでのライブを想定していたようですが、ROLLINSは、1か月前の録音の『NEWK’S TIME』(1959年まで発売されず)のPHILLY JOEとのデュオ曲(飾りのついた四輪馬車)で自信を得ておりピアノレスでも十分できると確信を持っていました。

 

但し録音当日は、WYNTON KELLYをVILLAGE VANGUARDに控えさせ、いつでもカルテットに変更できるように準備していたようです。

 

VILLAGE VANGUARDと言えばBILL EVANSの『WALTZ FOR DEBBY』、同じクラブとは思えないような雰囲気です。EVANSの方は、客層も食事を楽しみながら音楽も、という上品なサパー・クラブのような感じに対し、こちらは紫煙モクモク、薄暗く「さぁ、ジャズを聴くぞ」というコアな層で固めた雰囲気です。もっとも両者の間には3年くらい間隔がありますので、VILLAGE VANGUARD自体が変貌を遂げたのかもしれません。こちらの「地下鉄の音」は話題になっていないようですが、どうなのでしょう。

 

RVGの録音・マスタリングは、小さなクラブの最前列で、かぶりつきで聴いているような臨場感が半端ありません。不得手と言われるピアノが入っていないことも好結果に繋がりました。ただ小さなクラブでのライブ録音ということで、持ち込めたテープレコーダーには大きさの制限があり、ハッケンサックのスタジオ録音に比べれば機材の差が出ている感は否めません。

 

 

1957年11月4日

SONNY ROLLINS PLAYS(PERIOD SPL1204)

 

高名なジャズ評論家 LEONARD FEATHER(レナード・フェザー)監修のPERIODレーベルから。前掲『A NIGHT AT THE VILLAGE VANGUARD』の翌日の録音です。

 

楽器構成は『SONNY ROLLINS VOL.2』 (BLUE NOTE 1558)と同じテナー+トロンボーン+リズムセクションですが、メンバーが格落ちの分、アルバムの出来もそれなりです。JIMMY CLEVELAND(J.J.JOHNSON)、GIL COGGINS(MONK、SILVER)、WENDELL MARSHALL(PAUL CHAMBERS)、KENNY DENNIS(ART BLAKEY)という布陣。(括弧内がVOL.2のメンバー)SONNY ROLLINSは昨日(ライブ3セット)の疲れも見せず、好調を維持。ROLLINSのパートだけ聴いていると録音面で、やや劣るだけで差はありません。ですが、アンサンブルや他の共演者のソロになると途端に安っぽくなります。特にドラムの差は歴然です。前日のライブでも演奏した「SONNY MOON FOR TWO」は割とタイトな演奏で期待を持たせますが、次の「LIKE SOMEONE IN LOVE」はROLLINSのソロ以外聴く価値のないようなレベル、レナード・フェザーとアルフレッド・ライオンのプロデュースの差が歴然としています。3曲目はチャイコフスキーの「悲愴」、クラシックをジャズで?とキワモノの先入観を持ちますが、変に、こねくり回すことなくストレートに表現していて、一聴の価値はあります。良かったのは片面3曲にしたこと、LPフルだったら更に評価を下げたと思います。録音はCHARLES RAUCHER(誰?)

 

ちなみにB面は、THAD JONESの『MAD THAD』(PERIOD 1208)と同じセッションで、SWINGVILLEあたりの中間派が好きな方にはお薦め。出来はB面の方が遥かに上です。