世界で一番臭い食べ物はスウェーデンの「シュール・ストレンミング」というニシンの缶詰だそうですが、「臭豆腐」や「ブルーチーズ」も強烈な臭いを放ちます。日本でも「鮒ずし」や「くさや」は好きな人には癖になる食べ物ですが、名前を聞いただけで「NO THANK YOU」となる人の方が圧倒的に多いと思います。

 

RICHARD THOMPSONは作曲の才能、ギター・テクとも申し分ないアーティストでFAIRPORT CONVENTIONを脱退しソロ活動を始めます。FAIRPORTを辞めた理由は、いろいろと言われていますが「自分の曲をグループで使いたくなかった」それが最大の理由だと思います。

 

待望のソロ・アルバムは、今まで書き溜めてFAIRPORTには出し惜しみ?していただけあって名曲のオンパレード。作曲の才能爆発。「THE POOR DITCHING BOY」「THE ANGELS TOOK MY RACEHORSE AWAY」「THE NEW ST.GEORGE」「THE OLD CHANGING WAY」etc.これだけの素晴らしい自作曲をソロ・アルバムに詰め込めるシンガー・ソングライターは他にちょっといないと思います。サイドメンの演奏も文句の付けようが無く個人的には「無人島の1枚」に挙げても良いくらい評価しています。満を持して発売したソロ・デビュー作でしたが売れませんでした。

 

何故売れなかったのか、特にアメリカではREPRISEレーベル(英ではISLANDレーベル)史上最低の売上?との噂が出たほどの惨敗でした。原因は2つ。1つはお世辞にも上手いと言えないレベルのヴォーカル。FAIRPORT CONVENTIONでもヴォーカルのソロ・パートは殆どないほど弱く魅力に欠ける声質に原因がありました。そして2つ目が最大の理由ですが、彼が放つ強烈な英国臭です。トラッド・フォークのエレクトリック化を目指していたFAIRPORT CONVENTION在籍中に自然とTHOMPSONの自作曲にもトラッド臭が染みついていたのです。それは英国人には香しいもののカントリー&ウェスタンが子守歌の米国人には冒頭の臭いの強い食べ物と一緒で拒絶されたのだと思います。

 

 

こちらは2枚組のアイランド時代のベスト集。といっても殆どが未発表曲と別テイクのコレクターズ・アイテム。中ではやっぱりSANDY DENNYがヴォーカルの「イージーライダーのバラード」が本家BYRDSを凌ぐ出来栄え。それとTHOMPSONが自分のヴォーカルが気に入らなくて『FULL HOUSE』発売直前にお蔵入りした「POOR WILL & THE JOLLY HANGMAN」の鬼気迫るギターとマンドリンの掛け合いが聴きもの。

 

 

 

その後、ヴォーカルの弱さはLINDA THOMPSONとのデュオで補強され、更にデュオ解消後は英国臭も薄まりますが、私を含め、あの独特の英国臭が好きな人たちには物足りないものになりました。

 

RICHARD THOMPSONの英国臭は食べ物に例えると・・・・日本人には、せいぜい「納豆」レベルです。お試しあれ。