THE JAZZ MESSAGE OF / DONALD BYRD (SAVOY MG 12064)
＊THE JAZZ MESSAGE OF (SAVOY MG 12064) 、赤レーベル、両溝、手書きRVG
＊JAZZ MESSAGE #２（SAVOY MG 12092）、赤レーベル、両溝、手書きRVG
日本に於いては、どういう訳かHANK MOBLEYのリーダー・アルバムとして分類されてしまうDONALD BYRD初期の傑作。MOBLEYの参加はA面のみで、両面を通じて参加しているのはBYRDとKENNY CLARKEです。MOBLEYのアルバムとして誤った認識を持たれてしまった理由は、まずジャケットに写っている横顔がMOBLEYでBYRDの写真はどこにも使われていないこと。その後MOBLEYは「JAZZ MESSAGE #２」（SAVOY MG12092）というタイトルでリーダー・アルバムを出したため、本作は「JAZZ MESSAGE #１」というような勝手な呼び名で認識されているようです。また我国では人気のMOBLEYの名前を冠した方が売りやすかったというのも重要な要素でしょう。
ちょっと脇道にそれますが「JAZZ MESSAGE #２」の一番前（MG12091）はLEE MORGANの「INTRODUCING」。ｂsさんがちょうど取上げられていてそちらに詳しいのですが http://www.geocities.jp/bluespirits4196/kimamaniitimai5.html#introducing 「INTRODUCING」は元々はMOBLEYのリーダー・アルバムの予定でした。しかもLEE MORGANは、演奏していない曲があるにも拘らずCLIFFRD BROWNの後を継ぐ「時代の寵児」として注目されていたため、ジャケットはあたかもMORGANのリーダー・アルバムのような体裁で出されたのはご承知のとおりです。ただ流石にSAVOY側もMOBLEYに引け目を感じたのか「悩める？MOBLEY」の写真を使って前記「JAZZ MESSAGE #2」を即発売しています。どう見ても、それはMOBLEYのリーダー作以外には間違いようがないのに、ご丁寧にも裏ジャケには「JAZZ MESSAGE NO.2」の後に「FEATURING HANK MOBLEY」と追記があります。ちなみに、この＃２は「INTRODUCING」の「残り物」的な感は否めず、実際は演奏も素晴らしいとは思いますが、やや地味な自作曲が多く愛着を持つのには時間を要すかもしれません。
そこにいくと、本作には「THERE’LL NEVER BE ANOTHER YOU」「WHEN I FALL IN LOVE」「I MARRIED AN ANGEL」といったスタンダードが散りばめられており、MOBLEY作の「MADELINE」のような魅力的な曲も含まれているため、両面とも楽しめます。ただB面最後の「JAZZ MESSAGE」（WITH FREEDUM FOR ALL）だけは尊大な？タイトルにありがちな退屈な曲でちょっと興ざめです。
それにしてもこの頃のBYRDは良いですね。たしかにLEE MORGANに比べたら高音部での派手さはありませんが、情感たっぷりに歌い上げるバラードにおいては、MORGANには無いしっとり感があり十分凌駕していると思います。ここでも「WHEN I FALL IN LOVE」「I MARRIED AN ANGEL」あたりでその魅力を振りまいています。特に後者はこの曲のベスト・トラックではないでしょうか。McLEANの「LIGHTS OUT」の中の「LORRAINE」http://blogs.yahoo.co.jp/not254/23600631.html とともに忘れらないBYRDのソロです。
意外な拾い物が、B面でMOBLEYの代わりを務めるJOHN LA PORTA（ALTO SAX）でDEBUTやFANTASYにリーダー・アルバムがありCLARINET奏者としての方が有名ですが、ここではアルトのMOBLEYといった感じの亡羊とした演奏を披露しています。また音の良さも本作の魅力のひとつ。SAVOYのRVG録音はBLUE NOTEをも凌ぐと言われていますが、中でも本作は代表的なものではないでしょうか。この時代のホーンの録音に関してはRVGが一段抜きん出ています。
話は元に戻りますが、SAVOYは何故本作にMOBLEYの写真を使ったのでしょうか？充分魅力的なBYRDのソロが詰っていて上手く売り出せばポスト・ブラウニーの一番手と成り得た物を・・・。そうこうしているうちにLEE MORGANがあっという間にJAZZ界を席捲します。という訳で本当にお人好しなのはMOBLEYではなくBYRDだったように思うんですけど、いかがでしょう？