暑い夏の日が来ると思いだすJOHN COLTRANE。ジャズを聴き始めた1974年の夏は既に没後7年も経っていたのに、まだまだCOLTRANE一色でした。

 

毎年この時期はCOLTRANEを特集していますが、今年は一時期せっせと集めたシングル盤について2週に渡って取り上げます。今週は最も枚数の多いPRESTIGEレーベルです。PRESTIGEのCOLTRANEはLPの枚数も多く必然的にシングルカットも多くなったと思われます。

 

 

TIME WAS-PART1/ PART 2 (PRESTIGE 45-107)

 

ファースト・アルバム『COLTRANE』(PRESTIGE 7105)からのカット。普通に考えるなら「VIOLETS FOR YOUR FURS」か「WHILE MY LADY SLEEPS」を選択すると思いますが・・・シングル向きの軽快な曲と考えると、この曲かもしれません。レーベル面の住所が447WEST50THST.NYC(オリジナルLPは446WEST~)になっているところから1957年初頭の発売と思われます。機械打ちRVG刻印。「7E」の表示があり、耳マークでお馴染みのPLASTYLITE社製だと判別できます。シングル盤も両面合わせてLPと同じ7分30秒のフルバージョンです。

 

 

 

THINGS AIN’T WHAT THEY USED TO BE-PART 1 / PART 2 (PRESTIGE 45-122)

 

『WHEELIN’ & DEALIN’』(PRESTIGE 7131)からのカット。COLTRANE単独ではなくPAUL QUINICHETTE、FRANK WESSらPRESTIGE ALL STARSの作品。ここから住所はBERGENFIELD.N.J.に変わって最後のシングルまで同住所です。機械打ちRVG刻印、7E。この曲はFRANK WESSのフルートが素敵で意外にもシングル向きかも。A面4分25秒、B面3分50秒、合計8分15秒のLPと同じフルバージョンです。

 

 

 

TRANEING IN- PART 1 / PART 2 (PRESTIGE 45-119)

 

『JOHN COLTRANE WITH THE RED GARLAND TRIO』(PRESTIGE 7123)から。初期の名作の一つですが、ハイライトは「YOU LEAVE ME BREATHLESS」だと思いますが・・・。但し「YOU LEAVE ME~」は後年シングルのB面として発売されました(最後尾参照)。何故かA面は手書きRVG、B面機械打ちRVG刻印、7E。再発LPのタイトルにもなった「TRANEING IN」は通常シングル盤は片面3~4分なのにA面6分45秒、B面5分50秒、合計12分35秒、LPと同じフルバージョンです。それにしても冒頭から3分30秒もCOLTRANEが出てこない曲が果たしてシングル盤向きなのでしょうか?

 

 

 

GOOD BAIT-PART 1 / PART 2 (PRESTIGE 45-139)

 

LPだと、ここからBERGENFIELD.N.J.住所になり、シングル盤はLP発売後、やや遅れて発売されたことが分かります。『SOULTRANE』(PRESTIGE 7142)からのカット。初期の代表的な名盤で、この曲が最もシングル向きだと思います。機械打ちRVG、但し7Eは確認できません。A面5分5秒、B面4分55秒、合計10分丁度ですが、LPは12分超でPAUL CHAMBERSのベースソロが丸々カットされています。

 

 

 

I WANT TO TALK ABOUT YOU -PART 1 / PART 2 (PRESTIGE 45-177)

 

同じく『SOULTRANE』からカット。後年までライブの定番になった代表曲の初演。機械打ちRVG、M7?表示。A面は3分40秒、B面は3分20秒、合計7分丁度。一方LPバージョンは10分50秒で上掲の「GOOD BAIT」と同じくベースソロが丸々、RED GARLANDのソロも約1分30秒ほどカットされています。淀みなく展開されるCOLTRANEのソロは全時代を通しても屈指の演奏でしょう。

 

 

 

LUSH LIFE / I LOVE YOU (PRESTIGE 45-249)

 

『LUSH LIFE』(PRESTIGE 7188)からのカット。RVG、7E表示はともに確認できず、但し他のRVGカットと比べても音に遜色はありません。14分近くに及ぶ「LUSH LIFE」のLPバージョンはRED GARLANDやDONALD BYRDのソロも含め初期の代表的な、きめ細やかなバラード・プレイが堪能できます。一方シングルは4分15秒、やや荒っぽいく、ラストにBYRDが絡んでくる程度で、ほぼCOLTRANEの独壇場。シングル用に録り直したようにも感じますが、この頃のPRESTIGEが再録するはずもなく編集バージョンでしょう。「I LOVE YOU」はLPバージョンが5分30秒に対しシングルは3分5秒、こちらは中間部をカットしています。

 

 

 

STARDUST / LOVE THY NEIGHBOR (PRESTIGE 45-267)

 

『STARDUST』(PRESTIGE 7268)から。フリューゲルホーンのWILBUR HARDEN以外はRED GARLAND、PAUL CHAMBERSらのいつものクインテット。1958年の録音ながら1963年になって発売されています。A面の「STARDUST」のLPバージョンは10分30秒に対しシングルは3分30秒でCOLTRANEのソロのみ、フリューゲルホーン、ピアノ、ベースのソロは全てカットし最初と最後のCOLTRANEのソロを組み合わせたものと思われます。WILBUR HARDENのフリューゲルホーンのソロが素晴らしいのに残念です。B面の「LOVE THY NEIGHBOR」はLPバージョン9分30秒に対しシングルは3分丁度。フリューゲルホーン、ピアノ、ベースのソロを全てカットしCOLTRANEのソロのみ、これも冒頭と終盤を組み合わせた編集がされています。VANGELDER刻印。

 

 

 

THE BELIEVER / DAKAR (PRESTIGE 45-315)

 

ここからレーベル・デザインが変わり金色の錨マークに。『THE BELIEVER』(PRESTIGE 7292)および『DAKAR』(PRESTIGE 7280)からのカット。『THE BELIEVER』は1958年、『DAKAR』は1957年の録音で当初はお蔵入りした音源で1963年になって発売されました。「THE BELIEVER」は幾つかのアルバムに分散されたDONALD BYRD、RED GARLANDを含むクインテットセッションからで、LPのA面全部を使った長尺曲。それを3分そこそこのシングル盤にカットすること自体に無理があり、ほんのさわりの部分だけでフェイドアウト、ハードバップの枠からはみ出そうとするCOLTRANEのソロが聴きものですが、シングル盤では全てカットされています。シングルカットするならB面の「NAKATINI SERENADE」の方がヒット性があり、ずっと向いていると思いますが・・・PRESTIGEレーベルの方針が分かりません。なお『DAKAR』のリアルオリジナルは16回転盤の『BARITONES & FRENCH HORNS』で所有していますが、16回転用のTD-124 が長期故障中のため「DAKAR」については比較できません、悪しからず。

 

 

 

BLACK PEARLS-PART 1 / PART 2 (PRESTIGE 45-373)

 

またレーベル・デザインが変わり、右錨マークに。同名アルバム『BLACK PEARLS』(PRESTIGE 7316)から。『BLACK PEARLS』は1958年に録音されるも当初はお蔵入りし1964年になって発売されました。LPバージョンは13分超、一方シングルは両面合わせて8分丁度。シングルとしての時間制限でやむを得ないのでしょうが、ピアノソロとベースソロが丸々カットされています。RED GARLANDのソロは、途中でブロックコードに変更するところなど素敵なだけに残念です。VANGELDER刻印。

 

 

 

BY THE NUMBERS-PART 1 / PART 2 (PRESTIGE 45-394)

 

『THE LAST TRANE』(PRESTIGE 7378)より。COLTRANE作のスローブルース、LPバージョンは延々11分の大作ですが、シングルでは両面合わせて7分30秒程度に編集されています。冒頭RED GARLANDのソロが6分近く続き、お終いの方を2分カット、B面はCOLTRANEのソロが終わったところでフェイドアウト、中途半端な終わり方で、PRESTIGEらしいと言えばそれまでですが・・・。この1958年の録音の『THE LAST TRANE』もCOLTRANE在籍中には発売されず、ATLANTICを通り越し、IMPULSEも半ばの1965年になってようやく発売されました。長いことお蔵入りしていたとは思えないハードバップの佳作です。VANGELDER刻印。

 

 

 

I LOVE YOU / YOU LEAVE ME BREATHLESS (PRESTIGE 45-415)

このLPは所有しておらずネットから画像は拝借

 

PRESTIGE時代のCOLTRANEのベスト集『JOHN COLTRANE PLAYS FOR LOVER』(PRESTIGE 7426)から。但しこのベスト盤は所有していないため詳しい比較はできません。「I LOVE YOU」は上掲の(PRESTIGE 45-249)とは編集が違い、いきなり主メロディからスタートします。VANGELDER刻印。

「YOU LEAVE ME BREATHLESS」は元々『JOHN COLTRANE WITH THE RED GARLAND TRIO』収録曲であり、オリジナルLPバージョンの7分20秒を2分45秒に短縮しています。オリジナル盤の滑らかな演奏に対し(再発)シングルは特に高音部分での粗っぽさが目立ちます。これはオリジナル盤が1957年に対し再発盤(ベスト盤)は1966年、年数がこれだけ空いているとRVGがリマスタリングしても限界があることを示しています。

 

 

とかく評判が良くなかったPRESTIGEのオーナー、BOB WEINSTOCKも目の付け所は素晴らしく、自社に在籍時に発売したアルバム以外にも全盛期のCOLTRANEを数多く録音しました。それらは他レーベルに移籍後に発売され、ハードバップ期のCOLTRANEにシンパシーを感じるファンの要求を満たすとともに、PRESTIGEが生き長らえるのに貢献しました。