ジャズも50年以上聴いていると贔屓のレコードが固定されて、なかなか、その枠から抜け出せなくなります。何百回も聴いているレコードもある一方、入手したけれど1~2回しか聴いていないレコ―ドの方が遥かに多いのが現状です。そんな固定概念を打破してくれるのが外部からの情報です。かつてはジャズ喫茶やレコード店で掛かっていたレコードから新たな発見をすることが多かったのですが、最近は出掛けなくなった上に、たまに訪問しても有名アーティストの有名盤ばかりで心が動かされることは殆どありませんでした。

 

そんな状況下において替りの情報源は皆さんのブログ。割とマイナーなレコードを賞賛されているのを拝見して「あ~、そう言えば持っていたな」と引っ張り出してきて久しぶりに聴いてみると思いの他、良かったりします。

 

穏やかで優しい音色のレスター系テナー奏者のHERBIE STEWARDも、そうした一枚。

 

WOODY HARMANのSECOND HERDでZOOT SIMS、SERGE CHALOFF、STAN GETSとともに“FOUR BROTHERS”として名を馳せるも他の3人に比べると、その後の活躍は限られていて多くはビッグバンドの一員のため、本人のソロが聴けるものは、ごく僅かでした。

 

 

ONE MORNING IN MAY (MARSHMALLOW  EXPORT MMEX-118-LP)

 

上不 三雄さんのMARSHMALLOWレーベルから発売されたHERBIE STEWARDの実質初リーダー作と言っても良い作品で、長い間お蔵入りしていたのが信じられないくらい素敵な内容です。既に 60代半ばを過ぎていたことからミディアム・スロー以下の曲が多く、演奏は穏やかで滋養に富み、特にクラリネットに持ち替えた「CHARADE」と「MEMORIES OF YOU」には心が和みます。円熟期に入ってから、このような素敵なレコードを後世に残せたことはHERBIE STEWARDにとって望外の喜びだったでしょう。1992年5月19日、横浜関内ホールでのライブ録音は観客の拍手がカットされているためスタジオ録音と間違える程、完璧な演奏です。

 

 

 

HERBIE'S HERE (MARSHMALLOW  EXPORT  MMEX-136-LP)

 

上掲アルバムから4日後の1992年5月23日、山形市スタジオOZでのライブ録音。こちらのライブでも繊細で心温まるテナーとクラリネットを聴くことが出来ます。サイドマンは同じくGENE DINOVI(P)DAVID YOUNG (B)木村由紀夫(DS)、いずれも控えめな演奏で主役のHERBIE STEWARDを引き立てていて好感が持てます。MARSHMALLOWの作品はレーベルが発足した頃に『SWINGIN' WITH ALLEN EAGER』を購入して以来でした。

 

 

 

HERBIE STEWARDの全盛期はWOODY HERMAN楽団に在籍していた頃でSP盤の時代。他にARTIE SHOW楽団やHARRY JAMES等STEWARDが参加したSP盤は多いのですが、自身の名前を冠したのはROOSTの3枚、計6曲だけです。12~13年前、SP盤にハマっていた時に3枚まとめて入手しました。

 

HERBIE STEWARD QUINTET (ROOST 510)

 

HERBIE STEWARD QUINTET (ROYAL ROOST 515)

 

上掲の2枚(4曲)はギター入りのクインテット構成、ピアノがAL HAIGなのが肝。1950年1月17日のセッション。これらは長い間、未LP化でしたが1980年に英SPOTLITEからAL HAIG名義で『MEETS THE MASTER SAXES VOL.3』に収録されLPでも聴けるようになりました。

 

 

HERBIE STEWARD QUARTET (ROYAL ROOST 525)

 

こちらはピアノがDICK HYMANのカルテット・セッション。上掲の2枚のSP盤とくらべHERBIE STEWARDのテナーソロが大きくフューチャーされベストな内容。詳細は不明ながら同時期の録音と思われます。現状、未LP化。

 

 

最も過小評価されたアーティストと言えるHERBIE STEWARD、レスター直系の穏やかで優しい音色には魅力がいっぱい詰まっていますが、有名アーティストと比べると、これと言った特徴に乏しく、ブラインドフォールド・テストでHERBIE STEWARDを当てるのは困難を極めると思います。このあたりが過小評価に繋がった最大の要因でしょう。