粟村政昭氏は名著『ジャズ・レコードブック』でBOB BROOKMEYERについて「僕はこのブルックマイヤーという人を全然買わないのだが、ゲッツと言いマリガンと言い、不思議とこの人を相棒にすることを好んだ。ブルックマイヤーのヴァルブ・トロンボーンというのはフレーズも野暮だが楽器の音色がよろしくない。」と辛口のコメントを残しています。

 

『ジャズ・レコードブック』を購入してから半世紀近くが経過、今でも粟村政昭氏は、最も好きなジャズ評論家ですが、はっきりと異を唱えます、BOB BROOKEMEYERはSTAN GETZの“最高の相棒”だと。同コンビの最高傑作が3枚の”INTERPRETATIONS”シリーズです。

 

 

INTERPRETATIONS BY THE STAN GETZ QUINTET #1(NORGRAN MG N-1000)

 

INTERPRETATIONS BY THE STAN GETZ QUINTET # 2 (NORGRAN MG N-1008)

 

INTERPRETATIONS BY THE STAN GETZ QUINTET # 3 (NORGRAN MG N-1029)

 

”相棒”に要求されるのは、対等に活躍することではなく、主役をより輝かせる、”触媒“のような働きです。BOB BROOKMEYERは、その一般的な知名度からは想像もつかないほど重用され、ホーン奏者としては1~2位を争う程、多忙な(レコーディングの多い)ミュージシャンでした。ここでも26歳”旬”のGETZの魅力を引き出すべく黒子に徹しています。

これはBOB BROOKMEYER自身も自分が表に出過ぎると、サウンドが途端に古色蒼然として野暮ったくなることを理解していたからだと思います。

 

そして、驚くのは、これが1953年西海岸の録音ということです。編曲過多な西海岸のイメージとは一線を隔し、インプロビゼーション中心で、その充実度は同時期の東海岸のJAZZをも上回ります。同じ頃のMILES DAVISやSONNY ROLLINSの演奏を思い浮かべれば、このコンビが、如何に抜きんでいたかを理解できると思います。でも残念ながら50年代を代表するモダンジャズの名盤にもGETZの代表作にも選ばれることは、まずありません。なんでかなぁ~。『ジャズレコード・ブック』の影響?

 

 

 

さて、ここからはコレクター的視点で・・・・。

 

過去に何度も記載しているようにNORMAN GRANZ時代のVERVE系(CLEF、NORGRAN、VERVE)は、同じ音源のレコードをタイトルや曲順を変えて再発したため困惑します。このGETZ-BROOKMEYERのコンビのレコードも実に紛らわしいので注意が必要です。そのままの形で再発すれば良いものを、下掲のようにタイトル、ジャケットを変え、しかも両方のA面どうし、B面どうしを組み合わせるから始末が悪い。多くのSTAN GETZコレクターは商魂たくましいNORMAN GRANTZに一杯食わされたことでしょう。

 

MORE WEST COAST JAZZ (NORGRAN MG N-1088)

これはLOS ANGELES録音なのでタイトルは間違いではないのですが、GETZにはSHELLY MANNE、CONTE CANDLIらとの『WEST COAST JAZZ』(NORGRAN MG N-1032)というレコードがあるため、そちらの続編と勘違いします。

 

A面・・・・・上掲『INTERPRETATIONS#1』のB面と同じ

B面・・・・・上掲『INTERPRETATIONS#2』のB面と同じ

 

 

STAN GETZ ‘57 (VERVE MG V-8029)


「'57」の表記は如何にも1957年の録音のように思えますが、実際には1953年で「'57」は1957年に発売(再発)したということ。BUD POWELLにも同様に『BUD POWELL '57』というタイトルの再発があります。

 

A面・・・・・上掲『INTERPRETATIONS#1』のA面と同じ

B面・・・・・上掲『INTERPRETATIONS# 2』のA面と同じ

 

 

STAN GETZ ’57 (ARS G-443)

ARS(AMERICAN RECORDING SOCIETY)は通販専門のレコード会社で、ジャズ部門はVERVE系を取り扱っていました。本作は上掲VERVE盤と同内容ですが、違いはRVGがリマスタリング(DEADWAXにRVG刻印)を手掛け、ABBEY MANUFACTURING 社(AB刻印)の製造という点です。

 

「音質」は、もちろん、オリジナルのイエロー・ノーグラン盤の方が迫力があり、抜きんでいます。