ジャズにおけるDAVID STONE MARTIN、若き日のANDY WARHOL、プログレッシブ・ロックのHIPGNOSIS(ヒプノシス)らが描いたレコード・ジャケットには芸術の域にまで達した傑作が数多くあります。これらはレコード・ジャケットのために描かれたものです。ところが中には巨匠の名画を、そっくりそのままジャケットに使用したケースも・・・ROCK界ではSALVADOR DALI(ダリ)の絵がJAMES GANGの『NEWBORN』に使われたのをはじめ、その独創性からヘヴィーメタルバンドにも幾つか使用されています。また近年は現代アート画家の作品も数多く使われているようですが、この辺は守備範囲外なので全く詳しくありません。

 

さて、モダンジャズの世界で巨匠の名画をジャケットに使用したレコードは・・・。

 

THELONIOUS MONK PLAYS DUKE ELLINGTON(RIVERSIDE 12-201)

 

PRESTIGEからRIVERSIDEへ移籍して最初のアルバムでタイトルどおりELLINGTON集。オリジナル・ジャケットはMONKがサイドマンとともに写ったもの(下掲)でセカンド・プレス(上掲)ではHENRI ROUSSEAU(アンリ・ルソー)の有名な『ライオンの食事』に変更されています。ちなみに、かつて発売されていた国内盤もこのジャケットで、色彩豊かでエキゾチックなELLINGTON集には、こちらのジャケットの方が合っているように思います。なおジャケ裏には、COVER PAINTING :”THE REPAST OF THE LION ” BY HENRI ROUSSEAU (COURTESY OF LEWISOHN ESTATE)の記載があり、絵の使用許可を得ています。録音はピアノの録音が不得手と言われるRVG、但し録音以上に特徴が出るマスタリング(カッティング)はRVGではないためピアノの音が潰れたりモゴモゴ状態にはなっていません。MONKとしてはCHANGE OF PACEの作品、気楽に聴くのが良いと思います。

 

オリジナル・ジャケット

 

 

MISTERIOSO / THELONIOUS MONK QUARTET (RIVERSIDE 12-279)

 

テナーにJOHNNY GRIFFINを配したFIVE SPOT CAFEでのライブで『THELONIOUS IN ACTION』は振り分けられた姉妹アルバム。『IN ACTION』の方が先に発売され演奏内容も良いのに、こちらの方が圧倒的に人気が高いのにはGIORGIO DE CHIRICO(キリコ)『予言者』の絵を使用したジャケットが影響しています。フリージャズが出現する前のジャズ界ではユニークである種、超越的と捉えられていたMONKの音楽のイメージは形而上のキリコの絵画がピッタリです。こちらもジャケ裏にCOVER PAINTING-”THE SEER” BY GIORGIO DE CHIRICO:COURTESY OF JAMES THRALL SOBYと記載され、きちんと承諾を得ていたのが分かります。録音はRAY FOWLER、ライブとしては良好な音質です。

 

姉妹アルバムの『IN ACTION』

 

何故MONKのジャケットに巨匠の名画が使用されたのでしょうか?想像の域を出ませんが『PLAYS DUKE ELLINGTON』のオリジナル・ジャケも『IN ACTION』のジャケもMONKにとっては”普通過ぎ”て彼のユニークさや斬新さが全く伝わってこないため、MONK自身から巨匠の絵を使用するよう要望があったのでは・・・と思っています。前代未聞のことにレーベル側も驚き、絵画の使用許可を得るのに奔走するはめに?

 

視覚に訴えるジャケットの持つ力は大きく、中身の音楽のイメージに良くも悪くも大きな影響を与えます。また逆に音楽によってはジャケットに使用した絵画のイメージも変わってしまいます。MONKの2枚は成功しましたが、その後、暫く同様のケースが続かなかったのは、そのあたりを考慮して慎重になったためでしょう。

 

 

 

ちなみに巨匠がレコード・ジャケットを描いた草分け的作品は1955年のSALVADOR DALIリ)によるJACKIE GLEASONの『LONESOME ECHO』だと思います。これはダリとJACKIE GLEASONが友人だったため実現したようです。但し完全なムード・ミュージックのため蒐集対象外。そこでYOU TUBEで聴いてみましたが、音楽とジャケットのイメージが全く合わないように思います。

 

この画像はネットから、(左)ダリ(右)グレンソン