KENNY DORHAMは晩年になると、その“しょぼさ”が全開になります。また共演者の魅力を引き出す能力にも磨きがかかります。
EASTWARD HO! / HAROLD LAND IN NEW YORK WITH KENNY DORHAM (JAZZLAND JLP 33)
CONTEMPORARYやHI-FI JAZZの吹き込み等、西海岸で活躍していたHAROLD LAND、残念ながら彼のCOMTEMPORAYのレコーディングには一度も感心したことがなかったのに、東海岸に移ってからの録音には心が動かされます。どこが違うのか?テナーに感情を込めているか、いないか、哀愁があるか、ないかの違いです。テナーの音色も随分と柔らかくなったように感じます。HAROLD LANDもHANK MOBLEYと共通点があり、相棒のトランぺッターがハイノート・ヒッターだとすっかり埋もれてしまうのでDORHAMのような“しょぼい”音色のトランぺッターが適しています。「SO IN LOVE」や「SLOWLY」でのLANDの詩情豊かな表現は西海岸のレコーディングでは聴けなかったもの。
PAGE ONE / JOE HENDERSON (BLUE NOTE BST 84140)
何とも頼りない冒頭「BLUE BOSSA」のトランペット、DORHAM節全開です。JOE HENDERSONが注目されてBLUE NOTEのハウス・サキソニストにまで上り詰めたのは、偏にこのデビュー・アルバムのヒットによるものであり、名曲「BLUE BOSSA」を提供したDORHAMの功績は十分評価されてよいと思います。このあともDORHAMはJOE HENDERSONの後見人のように『OUR THING』(BLUE NOTE 4152)や『IN ‘N OUT』(BLUE NOTE 4166)にもサイドマンとして参加、前者では3曲、後者には2曲楽曲を提供し支え続けました。
ZODIAC / THE MUSIC OF CECIL PAYNE (STRATA-EAST SES 19734)
このレーベルで最も有名なCLIFFORD JORDANの『IN THE WORLD』にもDORHAMは参加していますが、肝心の名曲「VIENA」のトランペットはDORHAMではなくDON CHERRYが吹いているため、こちらを選びました。但し本作は1968年の暮れに録音されていたにもかかわらず、発売されたのは1973年になってから。その間に亡くなったWYNTON KELLYとKENNY DORHAMの追悼盤として陽の目を見ています。WYNTON KELLYもDORHAMも最晩年の録音ながら、アップテンポの曲にも問題なく対応していて早い死が惜しまれます。キング牧師暗殺を悼んで作られた「MARTIN LLUTHER KING JR.」でのDORHAMとCECIL PAYNEの悲痛なソロに心を揺さぶられる方も多いはず。