「PRESTIGEは1960年代後半までNABカーブ」説を検証するにあたり、先に検証した
BLUE NOTE、COLUMBIA、ATLANTICとの整合性が気になります。RIAAカーブ統一説に異論をお持ちの方の論理は「RIAA統一以前は、それぞれが別のカーブ(BLUE NOTE→AES、COLUMBIA→COLUMBIA、ATLANTIC→NAB)を使用していて、それがRIAA統一以降も継続された」と認識していますが、PRESTIGE(NEW JAZZ含む)は統一以前からRIAAカーブを使用していたので、統一後にRIAAからNABカーブに変わったというのは整合性が取れないのです。
RIAAとNABはBASS(低音)が同じなので、それほど違いは無いと思いますがNAB(PRESTIGE)とAES(BLUE NOTE)では随分と違うはずです。PRESTIGEとBLUE NOTEは、ともにRVGが録音からマスタリングまで一貫して担当していました。それなのに何故カーブが違うのでしょうか?今回はその辺りに注目しながら検証します。
なお抽出に当たりPRESTIGE最初期のLPで、オリジナルがSP盤や10インチLPでRVGがリマスターした盤は対象から外しました。
4、5AND6 / JACKIE MclEAN (PRESTIGE LP 7048)
McLEANのアルトはNABだと高音部を抑制され迫力が無くなるように感じます。BYRDのトランペットも高音がきつい部分は見当たないため高音を絞る必要もなく、更にMOBLEYのテナーはNABだと弱々しく、これはRIAAの方が良いと思います。またBLUE NOTEと同様にジャケ裏にも「RIAAカーブが最適」と記載されています。
この文言の記載は7200番の『STEAMIN'』まで確認。
SAXOPHONE COLOSSUS / SONNY ROLLINS (PRESTIGE 7079)
オリジナル盤入手から30年、最初の国内盤からだと50年聴き続けても飽きないROLLINSの決定盤。今まで何度聴いたことか、そして聴くたびに感動しました。それを今更“EQカーブが違いますよ”言われてもねぇ。はっきり言ってEQカーブを聴き比べても、ほとんど違いが分からない盤が多い中、サックスのワンホーン、特に本盤はとても違いが分かりやすくRIAAとNAB、AESだと全く違うし、これも裏面に記載がある通りRIAAカーブが最適、具体的にはNABだとROLLINSの迫力が十分に伝わってこないし、もう一人の主役MAX ROACHのドラミングにしても同様です。
RAY BRYANT TRIO (PRESTIGE 7098)
RAY BRYANTがソウル色やラテン色を濃くする前のオーソドックスなピアノトリオで、有名な「GOLDEN EARRINGS」で始まるA面だけでなくB面にも素敵なスタンダードが満載です。全体に涙腺に触れるような雰囲気なのでNABでは、ちょっと暗くなりすぎ、RIAAの方が合っているように思います。ちなみにAESも試してみましたが、さすがに明るくなりすぎ・・・まぁ、この辺は好みの問題です。EQカーブの検証を通してRVG録音のベースの音はピアノよりダメだ確信するようになりました。
COOKIN’ WITH THE MILES DAVIS QUINTET(PRESTIGE 7094)
冒頭のバラードの「MY FUNNY VALENTINE」はNABだとMILESのミュートが幾分かマイルドになり、GARLANDのピアノはキラキラ感が減少するためRIAAの方が良いと思いますが、アップテンポの「BLUES BY FIVE」はNABの方が・・・と曲によって、ばらつきがあります。聴き易いのはNABですが、オリジナル盤の最大の魅力は鮮度の高さから来る迫力(廃盤店主の言う処の”轟音”)にあると思っていますので・・・難しいですね。
THE SONG BOOK / BOOKER ERVIN (PRESTIGE 7318)
重量級テナーのワンホーンの代表作。良く鳴るテナーはRVGの真骨頂です。試しにAESでも聴いてみましたが高音がきつく不可。でNABカーブかRIAAかの選択となりますがTOMMY FLANAGANのピアノはRIAAの方が輝いていますが、RIAAだとBOOKER ERVINの高音部が一部TOO MUCHなところがあり、NABの方が安心して聴いていられます。
迫力のある音(轟音)と耳障りな音は紙一重、そのアーティストが贔屓な場合は”迫力がある音”になりますが、そうでない場合は"耳障りな音”になるのでしょう。
LITTLE BAREFOOT SOUL / BOBBY TIMMONS (PRESTIGE 7335)
これは、どうしても検証したかった一枚。ここでのSAM JONESのベースは鈍重そのもので、あの『SOMETHIN‘ ELSE』(BLUE NOTE 1595)のベース音に匹敵します。まだ『SOMETHIN‘ ELSE』はMILESやCANNONBALLがいるのでリスナーの耳は金管楽器に集中しましたが、本作はピアノトリオなためベースが目立つこと、目立つこと、まるでSAM JONESのリーダー作のようです。通常カーブ(RIAA)で聴いていた時は重苦しい駄作と決めつけていました。今回NABカーブで聴いても思ったような変化はなく、むしろBLUE NOTEのカーブと指摘されたAESが、ベースの重苦しさが軽減されてピッタリではないかと思っています。
今回はPRESTIGEとBLUE NOTEを比較しましたが、SAVOYもIMPULSEもほとんどがRVG録音。SAVOYについては指摘が無いのでRIAA、IMPULSEは「1960年代後半までMGMカーブ」と指摘されています。しかし冒頭でも述べたようにRVGが録音からマスタリング(カッティング)まで一人で行っているのに、どうしてカーブに違いが出てくるのでしょうか?特に50年代後半から60年代中頃までのRVGは多忙を極め、膨大な数の録音・マスタリングを行っていました。ジャズだけでなくクラシックの録音も少数ながらありますし、モノラル盤に加えステレオ盤の制作、BLUE NOTEのシングル盤やLITTLE LPの他、LPの再発にもVAN GELDER刻印があることから、それらのカッティング作業等、それこそ寝る暇もなかったのでは? そんな状態でレーベル別にEQカーブを変えていたとは、とても思えず、最多忙期はベルト・コンベア方式で右から左へ、一丁上がり的な作業だったと思います。
ただBLUE NOTEはALFRED LIONの眼が光っているので十分にリハーサルやテイクを重ね完璧なものを作る、一方PRESTIGEは、お金を掛けずに、ほぼ一発録りに近い等、各社なりの方針が、同じRIAAカーブでもリスナーには微妙な音の違いとなって伝わったのでしょう。












