ヒョン あなたは知らないでしょ?
時々ね
僕は あなたと暮らすあの部屋
どうしようもなく 寂しい夜は
ひとり寝る前に
この小瓶を取り出すんだ
あなたの愛用の香水
前に内緒で少しだけ もらったんだ
小さなアトマイザーに詰め替えて
その頃はまだこんなにハッキリとあなたへの想いを自覚していなかったけれど
活動休止 バッシングの渦中にあった僕にはもう信じられる物 寄りかかれる人はあなたしか居なくて
先の見えない不安の中
あなたがソロの仕事で僕と離れる時
いわば お守りや精神安定剤代わりと持ち始めたものだった
それから、2人で支えあって
心の底から笑える日々がぼくらにも巡ってきた
そして僕の心は日を重ねるごとに確実にあなたの方へ引き寄せられていった
だけど
一緒に居る時間が長ければ長いほど
素直になれなくて
もっと側に居たいのに
触れていたいのに
それは叶わなくって
あなたからのスキンシップだって
前みたいに、まるで兄弟の様に振る舞えているのか
最近は急に不安になることが多くって
こんな僕の気持ちに気付いて キモチワルがられるんじゃないかって
嬉しいのに 冷たくあしらったり
素直になれない
こんな可愛げのない僕だから
あなたに置いていかれる夢を見たりしたのかもしれないね
ねぇ
このお守りの使い方 最近わかったんだ
寂しい夜は
抱き締めて欲しかった夜は
枕に 少しだけ この香りを染み込ませて
目をつぶって 幾度となくヒョンを近くに感じたよ
だけど もう
こんなもの…
こんなものがあるから まだ僕は前に進めずに泣いてるんだ よね
熱いシャワーを頭から浴びる
あなたへの想いも
大好きだった香りも
このまま洗い流して 終わるんだ
僕の為に
あなたの為に
ふたりの為に…
スプレー部分の蓋を取り外して 流しっぱなしのシャワーに打たれながら
一滴…
また一滴 と
あなたの香りをこぼしていく
でも
これ逆効果?
シャワーの熱い蒸気に絡んで
むせかえるような 花の香りが 狭いバスルームに満ちていく
こんなんじゃ
もう一生
忘れられなくなってしまう
いっそ染み込んでしまえばいいのに
この期に及んでそんなこと考える自分が可笑しい
残りの液も全部流す
強い香りに次第に僕の匂いも混じって
香りはまた違うものに変化していく
香水は普段あまり使わないけれど
つける人によって香りも変化すると聞いたことがある
ヒョンとこんな風に
ぴったり寄り添えたら
きっとこんな香りかな
ヒョンの匂いも混じって
もっと変化するのかな
「…ヒョン」
忘れるつもりだったのに
僕はもう
知りたくなってる
教えて…?
もう 香りだけじゃ嫌だよ
感情が高ぶって
あなたの香りに包まれながら僕は欲情する
その夜
僕は 熱いシャワーに打たれながら
あなたを想って 自分の手で自分を慰めた
「ユノ…っ」
バスルームに虚しく響くあなたの名前
僕はあなたの名前を呼びながら果てた
排水溝に吸い込まれていく白濁を壁に凭れながら見つめた
何事も無かったかのように全て流れさった後も
切ない香りだけが残った