ジュリーネタがないこの時期、あるテレビドラマに夢中になった。
NHKで土曜日夜9時からやっていた、みかづきと言うドラマだった。
主演は、高橋一生さんと永作博美さん。
物語は、塾の講師。
二人の出会いから別れまでを塾の講師という、光の当たらない職業を通して描いたドラマだった。
光の当たらないと言うのは、今の時代は塾は当たり前だが昭和の中頃はまだまだ珍しく、学校教育が主だった。
学校の勉強に着いていけず、落ちこぼれていく子供を何とか助けたいと思った事が発端だった。
勉強が得意で分かる子は太陽で、落ちこぼれていく子は月だと表現した二人が、塾で子供達に勉強を教えるのだ。
学校教育が太陽だとしたら、塾は月のような存在だと思う。
太陽の光を十分吸収出来ない子供達を、暗がりの中静かに照らす月。
夫、吾郎は当時小学校の用務員だった。
子供達は放課後用務員室に遊びに来ては、吾郎に勉強を見てもらっていた。
授業に着いていけなくなった子供にとって吾郎は、教師とは違った観点から子供達を見て、問題が分からないところを子供の視点から優しく教えていた。
いつしか用務員室は授業に着いていけなくなった子供であふれていた。
ある日、吾郎はある生徒の母である千明と出会うのである。
千明には子供がいた。女の子だ。
千明は夫と別れて実母と子供と暮らしていた。
千明は吾郎に、落ちこぼれていく子供を救いたい、と話し吾郎にはその才能があると見込んだ。
二人はいつしか恋人同士になり、二人の間に女の子が二人生まれ、三人の子の親になった。
塾経営は順調だったが、千明にはだんだんと吾郎とは考えが変わってきて、進学塾としての野望が出てきた。
吾郎は相変わらず、学校の勉強に着いていけなくなった子供を教えることが大切だと千明に話しても千明は妥協しなかった。
二人は、毎日言い争いが絶えなくなり、千明は吾郎に暴言をはいたりした。
子供達も家のことを祖母に任せ、進学塾の事ばかり考えている母を避けるようになった。
いつしか二人の間には冷たい風が吹き、ある日吾郎は家を出て消息を立った。
千明が望んだ進学塾は、瞬く間に各地に広がり塾経営は軌道にのったかにみえた。
しかし二番目の娘がある問題を起こし、母である千明の塾経営にも飛び火し千明は塾経営から退くことになった。
そうしたある日、消息を立った吾郎が千明の元に表れる。
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仕事は別にしてこの夫婦はどこにでもいると思う。
長い年月をかけ夫婦としての絆が出来たかに見えても、ちょっとした意見の違いから別れてしまう。
妻として、母として夫や子供に尽くしたいと考えても、やりがいのある仕事を前にして意地をはり子供達に嫌われる。
そんな妻をいつも優しく支えて、好きなようにやりたいように仕事をさせてくれた夫。
夫だけは私を分かってくれる、夫だけは私から離れて行かない…
しかし夫は出ていってしまった。二人で同じ道を歩いていたはずなのに、どこで違ってしまったのか。
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実は吾郎は、塾経営をやめた千明を心配して塾の先生からいろいろ聞いていた。
吾郎は千明と進む道は違っても、常に千明を思っていた。
ある日、千明が自分に会いたいと思っているが、素直になれないと聞いて自分から千明の前に表れる。
優しい微笑みで千明を包み、大変だったなと思いやる。
千明は初めて泣いた…………。
失礼します、と言って吾郎は千明を抱きしめる。
びっくりした千明は涙を流しながら吾郎を抱きしめた。
二人はまた家族となり長い年月が立った。
ある日、千明が倒れた。
共に白髪になり、お互いを支えあい思いやり、長い年月が立った。
吾郎は二人の事を小説に書こうと思った。
みかづきと言う題名で…。
君と僕のこれまでの人生をたどる、
それは…それは…
ラブストーリーだ。
千明が言う、私達の物語、いつか近い未来、
今度は読むわ、読みたいわ……。
しかし、吾郎には分かっていた。
千明は自分が書いた小説を読むことは叶わないだろうと。
しかし、黙ってうなずいて千明が差し出した手を握る。
ダニーボーイが流れる中、二人はお互いを見つめあい、出逢いから今日までを振り返っていた。
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わがままで自分勝手で、家事のひとつも出来なくて、お米の研ぎかたも知らない妻。
人一倍、正義感が強くて給食費も払えない家庭の子でも勉強は大切だと話し、安い塾費で勉強を教え親に感謝される。
そんな優しい気持ちの妻を夫はいつも理解していた。
喧嘩したり、怒鳴りあったりしても二人には二人だけの歴史があった。
そんな二人に今、別れが訪れようとしている。
妻が天国に旅立つ。
高橋一生さん演じる吾郎の、これ以上ないという優しい微笑み。
ありがとう、
楽しかった〜あなたと会えて本当に良かった、と言う永作博美さん演じる千明。
微笑みながら涙をこぼす二人。
久しぶりに夫婦の愛を感じたドラマだった。
どこの家にもある夫婦の歴史。
だが、その家族、その夫婦にしかない物語。
究極のラブストーリー。
改めて、我が夫を愛したいと思った。