日曜日(14日)、仕事が休みだったので友人と二人で病気になってしまった友人を連れてカラオケをしてきた。
自宅の隣のカラオケ屋さんで、他にもお客さんがいたので、マスターがあらかじめ訳を話してみなさんに了解をもらった。
見るからに普通ではない友人は、誰が見ても異常だった。
家に迎えに行ったときに、ちょうど着替えていて黒のタイツをはいているところだった。
私達の前で下着一枚になりタイツをはいた。
ワンピースを着て、私が思わず
可愛いワンピースだね、
じゃお化粧しようか?と、聞いたら
顔が赤くて嫌なの、だからお化粧はしなくていいの、と言った。
先日も書いたが、彼女の思い込みで、顔は決して赤くないのである。
昔、遊びに行くと、お化粧をしない顔は誰にも見せられない、と言って私は彼女がお化粧を終えるまで玄関の外で待たされたものだった。
彼女の素顔は温泉宿に行ったときでさえ見たことはない。
それが今は、なんのためらいもなくシミだらけの顔を晒しているのだ。
パブをやっていた頃、化粧かぶれが酷くて
店に出るのをやめてしまいマスターがいくら説得しても一年間くらい、引きこもった時期がある。
代わりに手伝っていた人を代理のママにして、店を続けたが、自分がまた店に出るようになったら、その女性をクビにしてしまった。
その女性はお客さんのあしらいが上手くて、繁盛したのに、友人は嫉妬したのだ。
友人には、そういうところが昔からあったのは知っていたし、事実、私も嫉妬されたり妬まれたりした。
彼女の髪はまだ洗ってないようで、ベタベタしたまま先日に会ったときより酷くなっていた。
臭いもするので、そばにいるとオエッとなった。
髪の毛がそんな状態にもかかわらず、シミだらけの顔で化粧っけもなく、白と黒のツートンカラーのワンピースを着て真っ黒いタイツをはいた彼女は、やはり見た目からして異常だった。
彼女とご主人、友人と私の4人で店に入った。
彼女はこの店のオーナー夫人である。
何人かいたお客さんを見て、
こんにちは!!!
と挨拶から始まり、いつもありがとうございます!!!
と声を発した。
こうして文章として書いてみると、どこがおかしいんだろう、と確かに思う。
オーナー夫人がお客さんに、いつも来店してくれてありがとうございます、とお礼を言ってる訳だから。
うまく書けないのがもどかしいけど、何といったらいいか、どこかが切れてしまったと云うか、理性の固まりだった人の歯車が何かショックな事があったときなどプチっと切れてしまうと云うか、、、
とにかく、彼女の何かが切れてしまったのではないかと私には思えたのだ。
このカラオケ屋さんは一人千円で5曲歌える。
他のお客さんと交代交代で歌っていくシステムである。
飲み物は飲み放題で、コーヒー紅茶、日本茶、ジュース類がカウンターにありセルフサービスである。
アルコールは別料金。
軽いスナック菓子が出る。
食べ物は持ち込み自由だが、ママが気を使って軽い食事を出してくれた。
友人がパンを持っていって、渡したら嬉しそうに私のもの、私だけだからね!
と言って一人占めした。
袋を離さないのでマスターが、みんなで食べような、と声をかけても、
ダメ!、私のもの、と言って離さない。
そして、彼女が歌いたいという一曲目が入った。
藤圭子の、京都から博多まで♪である。
私が歌う〜〜〜!と言ってステージにかけていった。
大丈夫かなぁ〜昔のように歌えるのか、私は心配したが、なんと完璧に歌ったのである。
私達も他のお客さんも拍手喝采した。
本当にこれで、この彼女のどこが精神が壊れていると云うのか?
漢字も読めるし、歌の音程も合っている。
昔、ママをしていたときのように、お客さんに挨拶も出来るし、お礼も言える。
ただひとつ、様相がおかしいこと、それだけではないか。
彼女の歌を聴きながら私はそんな事を考えていた。
他のお客さんが歌い終わると、オーバーアクションで拍手し
ヨッ!大統領!上手い!
と叫びながら絶賛する。
彼女の二曲目が入った。
八代亜紀の曲だ。
これも昔から彼女の好きな歌である。
なみだ恋♪
が、どうしたことだろう、音程が取れてない。
でも彼女は気づかないでどんどん歌っていく。
思わず、私はステージに駆け寄っていった。
もう一本のマイクを手に、音程をとり彼女を私の声に誘導した。
だんだんと音程が取れてきて、普通に歌えるようになってきた。
彼女の背中をさすり、肩に手をおき落ち着かせた。
いや、彼女は落ち着いているのである。
音程が合ってない、なんて分からないのである。
ただ本当に気持ちよさそうに、歌っているのだ。
突拍子もない声で歌うこの人を見て、私は先日も感じた熱いもの、胸が詰まるような、言葉が出ないような気持ちになった。
もう一人の友人が客席で涙をぬぐっているのが見えた………。
その後も彼女が歌う度に、側に行き体をさすりながら、一緒に歌ったのである。
二時間位で、彼女に疲れが見えたのでお開きになった。
来週の月曜日、遠い病院に行き、診断の結果では入院、もしくは施設入所。
もう二度と会えなくなるかもしれない。
マスターの話しでは、実家の近くの病院にしたことを彼女の兄夫婦はあまり歓迎していないみたいだ。
マスターが兄夫婦に手紙を書き、自分も病気でもしも先に死んだら彼女は一人になってしまう。
彼女にとっては実家近くの病院の方がいいと思う、と記したそうだ。
そしたら兄嫁から電話があり、実家近くの病院にしたのは嫌がらせの何者でもない、と怒鳴られたらしい。
わざとしか思えない。
夫のくせに、妻の面倒を見放すのか、と。
マスターは決してそんなつもりはないが兄嫁にしたらそう感じたのかもしれない。
私達友人も、病院が近くならお見舞いにも行けるし、施設なら面会も出来るだろう。
もしも、もしもだ、マスターに何かあったときは実家近くの病院に転院させることも出来るのに、初めから実家近くの病院に入れるのは、やはり兄嫁には抵抗があるのだろう。
あちらにはあちらにの生活がある。
子供も孫もいる。
嫁に出した妹は、ましてや精神を壊した妹はやっかいな存在なのだろうか。
悲しいことだがこれが現実なのか。
しかし兄嫁は他人だけど、彼女の兄は実の妹ではないか。
かわいそうに思わないのかな、と感じた私はやはり他人だからだろうか。