あの日から、一度も夢に出てきてくれなかった夫にゆうべ会えた。

車を運転していた。

私は助手席で夫の横顔を見つめていた。

以下のような会話をしたように思う。



元気そうね

うん。

どうして帰れたの?

天国に門番みたいな奴がいて、帰りたいならお願いしてみれば、と言われた。

誰にお願いするの?

神様だったかな〜

いや、違ったかな、忘れた。

時々、帰れるらしいよ。

それは良かった!

じゃ、また会えるね!



会話はこれだけだった。

私は久しぶりに会えた夫を前にして、妙に冷静だった。

嬉しくて泣くかと思っていたら、泣いてはいない自分がいた。

いつもの生活の続きのような、自然な会話だった。

私は夫の横顔をただただ見つめていた。

50代くらいの夫だった。

まだ髪も白くならず、頬もふっくらとしていて元気な頃の夫だった。

いつも好きで着ていた紺のセーターだった。

真正面からの顔ではなかったが、私の好きな夫の横顔だった。



元気な頃

この好きな横顔を何度助手席から見たことか。

夫は前を向いて真面目に運転をして、時々私に視線を向けた。

何見てるんだ?

うん?あなたの顔。

この顔が好き!

ばーか。

夫はニヤニヤしながらもいつも嬉しそうだった。




その時と同じ顔をしていた。

自分で言うのも可笑しいけど、渋くてダンディーだった。

まだ、たった一回しか夢で会っていないけど、

私の寂しかった2ヶ月が少しは報われたように思う。

そうか、また会いたくなったら天国の神様か誰かにお願いすれば帰ってきてくれるんだ。

今度はどんな場面で会えるか楽しみだな。











あなたが亡くなって四十九日が経ちました。

大好きだった、鰹のお刺身をお供えしましたよ。

庭の梅の花もきれいに咲いたので、花瓶に差しましたよ。


四十九日法要とは、そもそも7日ごとに裁定を下され、その最終日。

いよいよ四十九日で最終裁定を決められて、天国に行くそうです。

だから、穏やかに迷わずに一番良い場所に行けるように残された家族は祈る日なのですね。

手を合わせ、あなたが天に昇れるように祈りますね。

明日からは日常生活に戻りなさい、もう悲しみも癒えるでしょ。


でも、

今日は朝から泣いてしまいました。

朝、玄関のガラス窓から外を見ていたら夫の元気な頃がふっと蘇りました。

あの小学校の坂を下りてくる夫の姿が浮かんだのです。


去年の夏、まだ元気だったころコンビニに行ってくる!と言い、出掛けた帰り私が玄関から見ているとコンビニの袋をぶら下げて、まだまだしっかりとした足取りで帰って来ました。

何買ってきたの?  暑いからアイスクリーム買ってきた!

あの三ヶ月後に脚が動かなくなるなんて夢にも思わなかった。

寝たきりになってしまうなんて。


朝、庭に出るとチューリップがもう少しで咲きそうになっていました。

庭の片隅から、あなたがスッと顔を出してくるんじゃないかと見回してしまいました。

あなたが植えた水仙ももうすぐ咲きますね。

大きな石をたくさん積んで作ってくれたロックガーデン。

去年はたくさん花を植えてみました。

相変わらず花は食えねえぞ!と憎まれ口をききながらも嬉しそうでしたね。

今年も植えましょうかね〜。



四十九日を過ぎても日常生活なんて私には来やしません。

どんどん思い出が浮かんできます。

この思い出しては辛すぎる事が、いつかは懐かしく感じるようになるのでしょうか。

あんなこともあった、こんなこともあった、と懐かしく微笑んで思い出すようになるのでしょうか。

いつも二人で作ってきた大切な想い出。

これからは私ひとりであなたを思い出しては、また涙するのでしょうか。


あなたの側に行きたいとつくづく思います。

あなたともっともっと一緒に生きたかったと思います。

ひとりでこれから先、どのくらい生きるのか分かりませんが早く呼びに来てほしいと本当に思います。


頑張って生きようと決めたばかりなのに、毎日この気持ちの繰り返しです。


そして今日、魂は天に行ってもあなたの遺骨は残します。

これからは、遺骨と私は生活していきます。

納骨はしません。

まだ私が寂しくて仕方ないので側に置いておきます。

いつまでも家に置いておいても良いらしいのですが

私の気持ちが落ち着くまで、、

納骨してももう大丈夫と思うまで、、

側にいてほしいです。

今日は四十九日のせいでしょうか、

とても辛い一日となりました。

明日からまた元気を出さなくちゃ…。














初めての月命日です。

あなたに会えなくなって、ひと月経ちました。



私は仕事にも復帰して表向きは以前と変わらない毎日を送っていますよ。

表向き、はね。


でもね、朝に起きておはよう!と声を掛けてもあなたの返事がないの。

いつもなら、おう!と言ってくれたよね。

おはようと言わなくても良いから、また、おう!って言ってほしいな。


それとね、朝ごはんを一人で食べるのは寂しいです。

元気な頃、今日はパン?それともごはん?

と言って、いそいそとあなたの朝ごはんを用意していたのがなつかしいです。

さあ食べようか、と二人でテーブルに付いて朝ごはんを食べながら話をするのが楽しかった。


じゃ、仕事に行ってくるねと言うと、また、おう!

行ってこい!

どちらかだったよね?

でも必ずあなたは、気を付けてな、バイク転ぶなよ、と言ってくれましたね。


今ね、バイクを運転しながら泣きそうになるときがあります。

泣かないけどね、仕事に行くから。

でもね、この街のどこにもあなたはいないんだな、と思うと涙がこみ上げてきます。



あの道、覚えていますか?

今から40年近く前、私が車の免許を取ってあなたが助手席に座り私が初めて運転をした道。


今は住宅が立ち並び、どの道か全く分からなくなってしまったけど、あのころは造成地で運転をするには最適な場所でしたね。


今ね、スーパーに行くときにバイクで通るとね、懐かしくてやっぱり涙がこぼれますよ。


仕事から帰ると、真っ先にあなたのところに行き、ただいまと声をかけましたね。

やっぱり、おう!だったけど。


今日の夕食ね、これ買ってきたの、食べるでしょ?って言うと、おう!いいねぇ!って言ってくれましたね。

あなたと食べる晩御飯、楽しかったなぁ〜

今日1日の事を話して、愚痴ったり笑ったりしながらひとつのお皿でふたりで食べましたね。


今は、一人ですよ。

ひとりで黙って食べているとね、食が進まなくて食べられないの。

私ね、あの日から痩せちゃったのよ。

ひと月で、4キロも減っちゃった。


友達がね、心配していろいろ持ってきてくれるのよ。

先日もね、鮭やカボチャ、里芋などを持ってきてくれたの。

鮭は焼いて、カボチャは煮物にして、里芋も柔らかく煮てみたの。

でもやっぱり食べられなかった。


あなたと一緒に食べたかった。

あなたと一緒ならいくらでも食べられるのにね。


夜ね、私のベッドのすぐ隣に眠るあなたに、おやすみ!また明日ね!と声をかけているんだけど聞こえていますか?

聞こえているよね?



そう信じて、私の1日が終わります。

また明日会おうね!


あれから1ヶ月、

あなたはまだ私の隣にいますよね。

あなたに恥じない生き方をしなくちゃいけないと思っています。

あなたといつか再会した時に誉めてもらいたいものね。

良く頑張って生きたね、お帰り!待ってたよ!って。