シベリア強制抑留 望郷の叫び 一六四 | 中村紀雄オフィシャルブログ 「元 県会議員日記・人生フル回転」Powered by Ameba

シベリア強制抑留 望郷の叫び 一六四

※土日祝日は中村紀雄著「シベリア強制抑留 望郷の叫び」を連載しています。

 

 毎日体中シラミだらけになるほどの不衛生、死に行く友の手から落ちる一片のパンを奪い合うほどのひもじさ、ノルマに追い立てられ、精も根も尽き果てるほどの過酷な労働等々、現実の収容所生活は生き地獄であった。なぜ、事実と全くかけ離れたこのようなことを感謝文の中に書くのか、その真意が測りかねるが、多くの日本人捕虜が、祖国へ書く手紙に、検閲を意識して、収容所では夢のような生活を送っていると書いたと述べていることからすれば、これがソ連当局の意にかなう方法だと真剣に考え、また、これが帰国を実現させる手段だと信じて書いたのであろう。

 そして、在ソ四年間を次のように総括して振り返るのだ。

「私たちは四年間の自分たちを振り返るとき、みずからの巨大な変化に打たれる。私たちは、日本では到底学び得なかった巨大なものを学びとり、身につけた。だから、社会主義の国で過ごした四カ年は幸運であり、誇りである。日本軍兵士の時は奴隷であったが、ソビエトで解放され、はじめて自由を得た」と。

また、アメリカを厳しく非難し、ソビエトこそ真の友だと叫ぶ。「アメリカ帝国主義は再び戦争をくわだてソビエトに襲いかかろうとしている。日本を戦略基地にして、日本国民を彼らの肉弾とし、彼らの泥靴の下に植民地奴隷にしようとしている。しかし、歴史の歯車を逆転させることはできない。私たち勤労者は命をかけて立ち上がり、彼らの頭蓋骨を一撃のもとに紛砕せんとの決意に燃えている。強力なソビエトこそ民主主義と社会主義の勝利の保証である。あらゆる大国のうち、ソビエトのみが、日本の民主化と非軍国化、日本の勤労者の利益と幸福を守って徹底的に闘っている。ソビエトこそ日本人民の真に頼むべき友なのだ」と。

 このような、アメリカを非難し、ソビエトをたたえつつ。いよいよ、自分たちの決意と誓いの部分に入ってゆく。

つづく