シベリア強制抑留 望郷の叫び 一五九 | 中村紀雄オフィシャルブログ 「元 県会議員日記・人生フル回転」Powered by Ameba

シベリア強制抑留 望郷の叫び 一五九

※土日祝日は中村紀雄著「シベリア強制抑留 望郷の叫び」を連載しています。

 

 

 ハバロフスク事件で闘った日本人は、今日の日本とは対極にある極限の状況下で、人間の尊厳を守るために闘った。その姿は、ロシア人の目にもまぶしく輝いて見えたに違いない。アレクセイ・キリチェンコは、それをシベリアの「サムライ」と表現し、高く評価した。「ハバロフスク事件の真実」とともに、ロシアの学者が提示した、この懐かしい「サムライ」という言葉を、私たちは今日の日本人の「心」を考える上で、重要なメッセージとして受け止めるべきではないか。戦後の日本は、日本人が大切にしてきた、伝統的価値観の多くを捨て去ってしまったが、その中には時代を超えて、新憲法のもとにおいても、日本人の心の芯として守ってゆくべきものが数多くある。サムライの心、かつてはそれを武士道といったが、これは日本人の伝統的な精神文化として、今改めて注目すべきものと私は考える。

 武士は、階級社会に於ける支配層であった。そして武士道は、この支配層のモラルであったから、今日の本質は発展して、武士階級だけでなく、それを見習った日本人全体の精神構造を支えるものとなっていたのではないか。そして、その中心は、自分という「個」を越えた社会のために貢献する志である。これは、今日の社会においても立派に通用する価値、いや、むしろ、物資万能に傾いた今日の社会において、より重視されなければならない理念である。それは、故人の存在よりも国家を尊重するという理念ではない。個人としての人間の尊重をより実現するために、言いかえれば、個人としての人間を高めるために、「義」、「信」、「孝」、あるいは「恥を知る」ということを、社会貢献に結びつける考えなのだ。

 

つづく