シベリア強制抑留 望郷の叫び 一四七 | 中村紀雄オフィシャルブログ 「元 県会議員日記・人生フル回転」Powered by Ameba

シベリア強制抑留 望郷の叫び 一四七

※土日祝日は中村紀雄著「シベリア強制抑留 望郷の叫び」を連載しています。

 

 また、次のものは、バンコク赤十字社に宛てた山中顕夫の請願書の要点である。

 

請願書   一九五六年一月三十日

バンコク赤十字社事務総長宛                     山中顕夫

「謹んで一書を呈します。ソ連邦ハバロフスク第十六収容所の日本人全員が労働を拒否し、ソ連邦政府に対して請願運動中であります。しかし、既に一ヶ月余を経過するも何等の解決が見られません。そこで、我々は、国際的人権・博愛の象徴たる貴社に対し、我々の実情を訴え、世界人類の審判を仰ぐと共に公正なる解決のために援助を与えられんことを懇願するものであります」という文に始まり、続けて、収容所の扱いの過酷さをこまごまと訴えていく。そして、「ベリア処刑の後、一般のソ連囚人に対して、画期的待遇改善が行われたのにもかかわらず、日本人に対してはかえって過酷の度を加えています」と指摘。これは、スターリンが死に、スターリンの下で、過酷な受刑者の扱いを指揮してきた内相ベリアが政変により銃殺され、囚人に対する処遇が大きく変化したことを指す。また、「我々は、このような過酷な管理の下で、十一年目に入り、平均年齢は四十二.六歳となり、健康状態は、昨年春以来急激に悪化し、我々総員の過半数は完全病人、または半病人となるに至ったのであります。それにも拘わらず我々は、隠忍自重し、困苦極まりなき非人道的奴隷的生活に耐えてきたのでありますが、管理当局は、零下三十度の酷寒の中に、八十人の病人を労働に狩り出すに至り、遂に自己の生命を自ら守るために人間として最後の要求を叫ばざるを得なかったのであります。即ち今日の八十名の運命は明日の我々全員の運命なのであります」

 と切実に訴える。そして、自分たちに対する処遇を改善するために力を貸してくれと請願している。

 

つづく