シベリア強制抑留 望郷の叫び 一四十 | 中村紀雄オフィシャルブログ 「元 県会議員日記・人生フル回転」Powered by Ameba

シベリア強制抑留 望郷の叫び 一四十

※土日祝日は中村紀雄著「シベリア強制抑留 望郷の叫び」を連載しています。

 

五 青年防衛隊の熱情

 

 代表石田三郎が当局によって拉致されることを誰もが恐れた。また、ハバロフスク検事総長は、収容所を訪れ、作業拒否に対して「直ちに停止せよ、さもなくば・・・」と武力弾圧をにおわせていた。

 このような状況の中で、日本人の間で一つの動きがあった。三十五歳以下の若者百三十人が自発的に青年防衛隊なるものを結成し、その結成式をやるから出てくれと、若者の代表が石田の所に来て行った。

 作業拒否闘争が始まって間もない頃であった。青年防衛隊宣誓式と銘打って式は野外で行われた。凍土の上に、シベリアの雪が静かに降っていた。若者は整列し、代表が宣誓文を読んだ。凜とした声が雪の空間に響く。顔にかかる雪にも気付かないかのごとく、青年たちの瞳は澄み、燃えていた。

 敗戦によって、心の支えを失い、ただ屈辱に耐えてきたこれまでの姿は一変し、何者も恐れぬ気迫があたりを制していた。彼らの胸にあるものは、かつて無敵を誇った関東軍の勇姿であろうか。いやそうではない。もっと大きな崇高な理想が彼らを突き動かしていたのだ。それは、国のため、天皇のためという上からの命令ではなく、自らの意思に基づいて人間の尊厳を取り戻すことを目的に、友のため、同胞のために正義の戦いに参加しているのだという誇りであった。

「私たち青年百三十名は、日本民族の誇りに基づいて代表を中心に一致団結し、闘争の最前線で活躍することを誓う」

と宣言し、我々は代表と生死を共にする、我々は老人を敬い病人を扶ける、我々はすべての困難の陣頭に立つ、我々は日本民族の青年たるに恥じない修養に努力する、と続いた」

つづく