人生意気に感ず「死の淵から生還した袴田さんに思う。死刑制度を議論する時だ」 | 中村紀雄オフィシャルブログ 「元 県会議員日記・人生フル回転」Powered by Ameba

人生意気に感ず「死の淵から生還した袴田さんに思う。死刑制度を議論する時だ」

◇ハラハラしていたが遂に再審開始が確定した。東京高検が特別抗告を断念したのだ。歓喜に燃える人々の光景が伝えられる。対照的なのは無表情の袴田さんの姿である。状況を理解できない認知能力であるらしい。このことが私には死の影に怯えて生きた長い時間の経過を物語っていると思えてならない。死刑からの生還は5例目である。この事実は、もし冤罪で死刑が執行されていたらという恐怖を訴えている。

 再審確定までには弁護団等の筆舌に尽くし難い努力があった。その一つに「1年以上みそに漬かれば化学反応が起きて血痕は黒褐色になる」という弁護側の実験結果がある。証拠とされた衣類は袴田さん以外の第三者が捏造した可能性がある。その第三者とは捜査機関の可能性が極めて高いと裁判所は認定した。

 袴田さんは長時間の取り調べを受けトイレも許されず自白を強いられた。この事実は憲法が絶対に禁ずると定める拷問に当たるというべきである。警察や検察側のおかしな点は他にも多くあった。裁判で犯人のものとされたズボンを袴田さんが着用したとしたら小さすぎてはけなったという。正に言語道断であり司法に対する信頼を地に落とすものだ。死刑判決に携わった一審の裁判官は無罪の心証をもちながら他の裁判官を説得できず心ならずも死刑判決を書いたと告白している。正しい裁判を実現する妨げとなっている問題として特に強調されるのは検察側に証拠を開示させるルールがないことだとされる。検察は被告に有利な証拠を表に出さないのだ。袴田さんのケースでは第二次再審請求になってから約600点の証拠が開示された。過去に再審無罪となった事件でも、新たに開示された証拠が無罪の決め手となったケースが多いと言われる。

 袴田さんが数十年もの長い間死の影に怯え続けたことは人権侵害の極致である。審理の長期化を招く一因は検察側が不服を申し立てるからである。欧米は再審制を進化させており、ドイツは検察の不服申し立てを認めない。日弁連は検察の抗告を認めないよう制度改正を求めている。かつて再審は針の穴を通るように困難とされた。しかし、冤罪は現実に多く存在する以上、再審の在り方を国会は議論すべきである。日本国民の多くは死刑制度を支持しているが、その多くは感情論に流されている。再審制の在り方も死刑の存廃とあわせて冷静に議論する時に来ていると思う。(読者に感謝)