シベリア強制抑留 望郷の叫び 八 | 中村紀雄オフィシャルブログ 「元 県会議員日記・人生フル回転」Powered by Ameba

シベリア強制抑留 望郷の叫び 八

※土日祝日は中村紀雄著「シベリア強制抑留 望郷の叫び」を連載します。

 

「日本のこと、日本人のこと、どう思いますか」

 私は、ドミトリーに聞いてみた。すると、ドミトリーは待っていたかのように、にっこり笑って語りだした。

「素晴らしい国で、とても好きです。シベリアの人たち、特にハバロフスクの市民や、日本海に面したウラジオストクの市民はですね、日本にすごく親しい感じがしているんですよ。なぜかというとですね、外見ると分かるとおり、ハバロフスクで走っている車の90%は日本の中古車です。質、いいですね。そして、誰に聞いても、オーッ、日本が一番、日本の商品が一番と言いますね。また、日本人ね、すごきマナーもっている。すごく約束守る人で働き者であるということですね。こういうこと、ロシア人の頭の中に入っていますね。なぜかというとですね。怠け者とか。約束守らない人であれば、日本ですね、こんなに経済的にも文化的にも発展できないと思うのですよ」

 パタポアさんもうなづいて同意を表している。ドミトリーの端正な顔には品があって、私を見る目は正直に心のうちを表しているようだ。私は素直に受け取ることにした。ドミトリーの話を聞きながら外を見ると、トヨタやホンダの車がやたらと目につく。そして、クール宅急便とか何々会社、何々運輸などという表示をつけ日本で使われていたままの姿で走っている車もある。シベリアで意外な日本に出合った思いで嬉しくなった。車内には、旅の疲れを癒すなごやかな空気が流れていた。街には緑が多い。車道と並行している並木はなんだろう。聞いてみるとポプラだそうだ。そうこうするうちに車はインツーリストホテルに着いた。

 インツーリストホテルはアムール川の近くに建てられている。私たちは、ロビーで明日からのスケジュールについて打ち合わせをして部屋に入った。部屋に落ち着く間もなく、私はアムール川を見たくなった。実はまだ、シベリアの実感を得ていないのだ。そのためにも、シベリアの大河アムールをまず見たいと思い、一人で外に出た。

つづく