人生意気に感ず「妊娠中絶禁止に関する最高裁判決に見る三権分立。アメリカの銃規制と自由の歴史」 | 中村紀雄オフィシャルブログ 「元 県会議員日記・人生フル回転」Powered by Ameba

人生意気に感ず「妊娠中絶禁止に関する最高裁判決に見る三権分立。アメリカの銃規制と自由の歴史」

◇私は大学で西洋史を専攻し、その一環として米国史を学んだ。中屋健一教授のゼミの光景を懐かしく思い出す。アメリカの歴史を振り返ると常に分断の危機があった。24日の最高裁は人工妊娠中絶に関するもので米社会の分断につながる恐れがある。この判決に対し前大統領のトランプ氏がこの判決を称賛しバイデン大統領が怒りを現したことは分断を物語るものだ。妊娠中絶は腹に子を抱えた女性の産む権利の問題であると共に、胎児の生命に関わる問題である。自由と人権の国アメリカにとって最大の課題の一つである。米連邦最高裁は「人工妊娠中絶の禁止を認める」判断を下した。判決文は「憲法は中絶の権利を与えていない」と明言した。この判決により全米統一のルールはなくなり、中絶の是非は各州に委ねられることに。

 かつて米全土で妊娠人工中絶は性暴力の例外などを除き重罪だった。

 バイデン大統領は判決の直後演説で語った。「最高裁は国民から憲法上の中絶をする権利を奪った。裁判所と国家にとって悲しい日だ」。バイデン政権は中絶を選ぶ権利を一貫して擁護してきた。今回の最高裁判決の実現にはトランプ氏が指名した保守派の判事3人全員が中絶禁止容認を支持した。最高裁判事の人事には大統領の指名と連邦上院の承認が必要である。このようにして実現する最高裁判事は本人の辞職を除き終身制である。私はこのような最高裁判事の任命方式は三権分立の原則から疑問ではないかと思う。最近の世論調査では最高裁の支持率は大きく低下している。中国・ロシア・北朝鮮からアメリカの民主主義を嘲笑う声が聞こえてくるようだ。

◇アメリカで銃規制が進んでいる。ストレスが極度に達すると思われるアメリカである。銃は歴史的にアメリカ人にとって神聖なものだ。開拓時代、銃は身を守る命の綱だった。現代の社会は洋の東西を問わずストレス社会である。池田小の事件をはじめ無差別殺人が跡を絶たない。もし、無差別殺人の衝動に駆られる人が容易に銃を手にできる状況を想像すると背筋が寒くなる。それが現実となっているのが米社会である。今月25日テキサス州の小学校銃乱射事件を受け上下両院超党派による銃規制強化法が成立した。21歳に満たない銃購入者の犯罪歴調査の厳格化や各州が危険と判断した人物から一時的に銃を取り上げる措置への財政支援などが中心となる。銃のために無茶苦茶に破壊された感のある米社会はどこまで立ち直ることができるか。自由の女神は真にアメリカの象徴になり得るのか。(読者に感謝)