「満月の大洗海岸を走る」   2006年2月15日(水) | 中村紀雄オフィシャルブログ 「元 県会議員日記・人生フル回転」Powered by Ameba

「満月の大洗海岸を走る」   2006年2月15日(水)

※土日祝日は「議長日記」及び「議員日記」を連載します。上毛新聞社から出版したもので、議員時代の私の動きを海外の視察も含めて振り返ったものです。


茨城県で妻と出席する会合があって、太平洋の岸辺のホテルに泊まった。運動靴が用意してあったので、夜海岸を走った。満月の青い光が、静かに寄せて白く砕ける波頭を照らす。遠くの暗い海面では赤い漁船の灯がゆっくりと動いている。ザザーと岸を洗う波の音とヒタヒタと土を踏む靴の音だけの静けさの中で、今日も走れたという小さな満足感が胸に湧いた。

毎日少し走っている。走ることは心の力を養う。いつも心の中のハードルを飛びこして走る。その気力は、日常の種々のハードルに立ち向かう心のエネルギーの小さな養分だ。

 朝6時半、9階の風呂から、朝もやの中に昇る真赤な朝日を見た。久しぶりの光景に神秘さを感じた。昔の人は太陽の力を生きるための根源的なものと思っていたに違いない。太陽によって農耕が左右され、農作物の出来不出来は即人間の生存を左右したからだ。現代人は太陽の力を忘れて生きている。そこには、科学への過信と人間の傲慢さがある。太陽の力、太陽の偉大さを正しく理解することの大切さを思った。

 「幕末と明治の博物館を訪ねた」(14日)

 博物館は、ホテルから数分の静かな森の中にあった。私たちの他は人影もない館内の一角には、幕末に命をかけた志士たちの熱い思いが立ち込めているように感じられた。中でも、万延元年(1860年)の桜田門外の変については、雪の中で、大老井伊直弼を襲う場面を描いた大きな絵がかかげられ、解説では、わずか数分で終わったこの出来事は幕府の権威を失墜させたと語られていた。安政の大獄で斬られた吉田松陰の像と書も近くにあったが、その30歳の死の鮮やかさに圧倒されるものを感じた。

 別のコーナーでは、山岡鉄舟、勝海舟、大久保利通、西郷隆盛らの書が展示されていた。書は人を現すというが、それぞれの筆の動きは激しく生きた人生を時の流れを越え静かに語りかけているようであった。

 今日の歴史教育が子どもたちの興味を引かないものになっているのは憂うべきことである。私は、近現代史がよく教えられていない現実を指摘してきたが、教え方も含め一層の研究がなされるべきものと思う。

 日本という国のために命をかけた若者たちの熱い鼓動が感じられた一時であった。

(県民が歴史から大切なことを学ぶことを願って。読者に感謝)