人生意気に感ず「近衛文麿のフンドシと自殺。吉田茂の現実主義・妖怪と言われた国士の岸」 | 中村紀雄オフィシャルブログ 「元 県会議員日記・人生フル回転」Powered by Ameba

人生意気に感ず「近衛文麿のフンドシと自殺。吉田茂の現実主義・妖怪と言われた国士の岸」

◇昨日に続いて「文藝春秋」を題材にする。ここでは近衛文麿、吉田茂、岸信介という日本の激動期の総理をそれぞれの総理経験の孫が語っている。それぞれの孫とは、この順に細川護煕、麻生太郎、安倍晋三の各氏である。終戦から戦後の復興に深く関わった総理であるが近衛の姿は悲劇であった。彼は東京湾のアメリカ砲艦に連行され峻烈きわまる訊問を受けた。その後GHQから逮捕指令が発せられ巣鴨拘置所へ出頭せよと命令が下った。出頭命令を明日に控えた夜近衛は青酸カリで自殺した。54歳であった。この時7歳であった細川氏は文藝春秋でフンドシの祖父のことを語っている。軽井沢の別荘で、フンドシひとつで日光浴をしている祖父の尻を叩いていたずらしたというのだ。フンドシの近衛はこの時幸せな一時であったに違いない。やがて訪れる悲劇を予期しなかったことだろう。

◇春秋で吉田茂を語るのは元総理の麻生太郎氏である。麻生氏はサンフランシスコ平和条約と日米安保条約を結んだ吉田の現実主義の凄さをしきりに称えている。現実主義とは中国ソ連を外して単独講和を選んだ点である。全面講和を強く主張した東大総長南原繁などを吉田は曲学阿世の徒として受け付けなかった。

 麻生氏は「おじいちゃまがママを取るからいつもママがいない」とごねたと春秋で語る。麻生氏の母が秘書代わりに同行することが多かったからである。

 同じく春秋で岸信介を語るのは安倍晋三氏である。安倍氏は岸の最大の功績は安保改定だと振り返る。これによって日本は明確に同盟国になった。この改定の時未曾有のデモがあった。自民党内をまとめるのも大変で岸は党内の協力をとりつけるため後継問題で順に密約を結んだ。安倍氏はこのことについて語る。「密約は本当?」祖父は頷いた。「実現するつもりはあったの?」祖父は「難しいと思っていた」。岸は密約について国家の存亡を前にした駆け引きの手段に過ぎないと考えていたのだ。そして一国の総理の地位を密約で決めるなど有り得ないという確信があったに違いない。安倍氏は祖父が布団に入れていろんな話しをしてくれたと語る。また、別の場面で語った面白いエピソードがある。幼少の安倍氏「あんぽ反対」と叫んでいるのを岸は目を細めて眺めていたというのだ。妖怪と言われた岸の素顔である。ポピュリズム、大衆迎合が当たり前の現代の政治状況の中で考えさせられる国士の姿であると思う。(読者に感謝)