「尾瀬国体・秋篠宮殿下に随行して」続 2006年2月21日(火) | 中村紀雄オフィシャルブログ 「元 県会議員日記・人生フル回転」Powered by Ameba

「尾瀬国体・秋篠宮殿下に随行して」続 2006年2月21日(火)

※土日祝日は「議長日記」及び「議員日記」を連載します。上毛新聞社から出版したもので、議員時代の私の動きを海外の視察も含めて振り返ったものです。

 

 秋篠宮の二泊目は岩鞍リゾートホテルである。殿下はここに午後4時30分にお着きになった。先導は、尾瀬開発社長の星野寛氏で、この人は同僚の県会議員である。私の部屋は3階であるが、窓を開けると、夕闇迫る雪の斜面を若い人たちが軽快に滑っている。やがてライトが灯り白銀の世界が周囲の闇から抜け出すように浮き上がった。

 翌朝未明、窓の下から、慌しく動く人々の気配が伝わってきた。午前9時、殿下と私たちは3台の雪上車で雪の急斜面を登る。タイヤを外して、その位置にキャタピラをつけた雪上車は雪をにぎり締めるようにガクガクと進み中腹のロイヤルボックスに着いた。

 ロイヤルボックスは、木の香も快い県産の杉で造られ、一面のガラスを通して、ジャイアントスラロームの競技の舞台が一望できる。右手上方の遥かな高みから豆粒のような人陰が飛び出し右に左に巧に旗の棒をかすめながら目の前に躍り出て矢のように走り下っていく。殿下は、スキー連盟副会長の説明をうなずきながらお聞きになり、質問もされておられた。

 次は、コンバインドジャンプの会場へ移った。同じようなロイヤルボックスが用意されていて、そこから見上げる高い位置にジャンプ台が設けられ、合図の音と共に、選手は急角度の斜面を滑り、やがて鳥のように宙に舞う。手を広げて着地した細い身体が風に乗って流れる若葉のように白銀の上を動く。殿下は身を乗り出すようにしてご覧になっておられた。

 午前中は陽光が雪の尾根を照らしていたが、午後は、空模様が一変した。午後12時30分、殿下が出発される時、見送りの列から外を見ると横なぐりの雪の粒が灰色の空間を埋め尽くしていた。山の上では、この雪の中で激しい戦いが繰り広げられている。雪の戦場を後にされる殿下を見送るにふさわしい。