人生意気に感ず「ふるさと塾で田中正造を語る。安倍が好きだと」
◇昨夜(26日)のふるさと塾は約50人の参加者で充実した雰囲気であった。私は田中正造の「狂気」の意味を語った。全体の空気を読んで発言する政治家、大衆迎合の世界で、田中の「狂気」を理解する立場である。
この時間、田中が最大限対立した古河市兵衛のことにも触れた。京都の貧しい豆腐屋のせがれで古河財閥を築いた男である。戦国乱世の雄の観があった。
足尾の銅を明治政府は戦争政策遂行上絶対に必要とした。近代戦争をたたかう上で電気通信材料としての銅は最先端の軍需物質であると共に生糸に次ぐ外貨獲得の手段であった。時は日露戦が迫る情勢下。明治政府は国民の命よりも戦争遂行の国策を優先させた。これに立ち向かったのが田中の「狂気」であった。田中の知行合一の行動は更に天皇直訴に突き進む。
私は、戦争遂行のためにハンセン病患者を国辱として隔離した当時の政策が、鉱毒問題で足尾銅山を保護した政策と共通することを話した。
田中の天皇直訴は日本中に衝撃を与えた。衝撃波の中に石川啄木、河上肇、内村鑑三がいたこと、そして直訴状を書いた人は大逆事件で死刑になった幸徳秋水であったことを力説した。塾生は熱心に聴いてくれた。
◇このふるさと塾で「安倍9条憲法NO」の署名を求める動きがあったが私は断った。大衆が憲法9条を巡り沸騰していることを肌で感じる。9条をめぐる議論は単純ではない。世論が反安倍で感情的になっていることにも抵抗感がある。その人は「安倍が好きなんて人は一人もいません」と言う。こういう状況でつい対抗心を起こすのが私の悪い癖で、「私は安倍が好きだ」と言ったら、その人は信じられないという顔をした。私のふるさと塾も興奮する世論に巻き込まれていることを感じた。
◇「足尾の鉱毒問題は解決したのですか」という質問があった。現在、渡良瀬川は菜の花が咲き乱れのどかな景色が果てしなく広がる。しかし、これをもって渡良瀬の鉱毒事件が過去のものになったと考えるのは誤りである。公害の原点として学ぶことが今こそ求められている。政府が絶対に安全だと言っていたところに福島原発事故が起きた。それは人災だったことが検証された。核テロの恐怖をアメリカから示唆されていながら活かせなかった。国民を欺いたことではないか。最大の公害問題である。(読者に感謝)