『今、みる、地獄の戦場』 第5回
パプアニューギニアの人口は約500万人で、首都ポートモレスビーには29万人の人が住む。ポートモレスビーは、連合軍最大の根拠地であった。ニューギニア屈指の良港と飛行場を備え、日本軍を攻撃する軍艦も爆撃機もここを基地として行動していた。だから、日本軍としては、ここを陥れることが重要な戦略目的であった。そして、連合軍にとっては、ここはオーストラリア防衛の要であり、ここを日本軍に抑えられたときは日本軍のオーストラリア上陸を許すことになると恐れる程の重要な拠点であった。
ポートモレスビーは快晴だった。とにかく、熱い。早朝だというのに、じとっとした熱さが肌にまとわりつく。
空港には、パプア・ニューギニア日本大使館の総領事皆川一夫氏が出迎えに来ていた。この日は日本大使館を訪れる予定であるが、まず一行はホテルに向かう。マイクロバスから眺める風景はどれも珍しい。熱帯の植物もそうであるが、行き交う肌の黒い人々、裸足の人も多いし、地べたに腰をおろしたむろしている人々もいる。やがて気付いたことは日本の中古車が非常に多く走っていること、信号機はまったく見つからない。そういう中を雑然と人と車が動いているようだが、一定の秩序が出来ているのだろう。私達一行は宿舎のホリディインホテルに着いた。日本のホテルと違って、回りは厳重な柵に守られ、出入りには、守衛がいかめしい門扉を開閉している。治安がよくないということは聞いていた。ホテルでしばし休憩して、大使館に向かう予定である。
土日祝日は、中村紀雄著「今見る 地獄の戦場」を連載します。