人生意気に感ず「応徳温泉に。すいとんの味。重監房。小説を読む人々」 | 中村紀雄オフィシャルブログ 「元 県会議員日記・人生フル回転」Powered by Ameba

人生意気に感ず「応徳温泉に。すいとんの味。重監房。小説を読む人々」

◇29日取材で草津を訪ねた。冬景色と化した西吾妻を進むと、雪をかぶったまだら模様の山林の上に一際輝く雪の世界が神々しいように見える。草津白根である。国道292に入り、白砂川を北上し六合(くに)の道の駅の一角にある応徳温泉に入る。入湯料は300円。外の雪景色を見ながら日頃のストレスを癒した。

 

 ぬるい湯であるが天下の名湯で、地元の人は草津より良質だと言う。平成4年には皇太子が入られたことで有名である。

 

◇近くに80歳の老婆が営む食堂があり、私はここですいとんを食べるのが楽しみになっている。すいとんは、戦中戦後の飢えの時代を知る者にとっては懐かしい。キノコ、しみ豆腐、ゴボウ、かぼちゃなど様々なものが入って実に美味しい。料金は700円。御主人が弱って施設に入ったので気楽に1人で商売を続けているという。立居振舞、笑顔や話し方が亡き母を思わせる。

 

 私はこの老婆からはちみつを入手したが、ふと話すその言葉が気になった。近年「ハチがどっかへ行っちまった」というのだ。「蜜を置いたまんま消えちまった。このあたりの箱は、みないなくなった。どこへ行ったんだかね」と。私は世界的に問題になっている「蜂群崩壊症候群」といわれる現象を思い出した。こんな山里にも地球的異変が押し寄せている兆候なのか。昆虫などは、私たちにははるかに及ばない超能力を備えている。すいとんを味わいながら近未来への不安を感じた。

 

◇私の小説、上毛新聞連載の「死の川を越えて」は、やがて特別病室「重監房」に近づく。何度も訪れて学芸員の方とはすっかり親しくなった。究極の牢獄ともいうべき重監房で亡くなった人は22人であるが、監房内で死んだ人は14人で、あとの8人は外に出された後、健康を取り戻せずに死んだ人であるという。また、14人のうち、3~4人は縊死(いし)、つまり首をくくって自殺した人だという。これらの人たちは、公開裁判という司法手段を経ることもなかった。最高裁は非を認めて謝罪したが、裁判の内容は不十分だった。最高裁は果たして重監房の実態をどこまで知っていたのか。

 

 この日、3か所に寄ったが、さすが草津、私の小説を読んでいると言われ嬉しかった。六合の豆腐屋の御主人、温泉図書館の職員の女性、そしてコーヒーを飲んだ店で働く老婦人である。今朝第14回、大陸の嵐の章に。(読者に感謝)