随筆「甦る楫取素彦」第170回 | 中村紀雄オフィシャルブログ 「元 県会議員日記・人生フル回転」Powered by Ameba

随筆「甦る楫取素彦」第170回

そして、廃娼の効果と公娼再興の弊害を次のように訴える。群馬の廃娼は多年にわたる重要な歴史があるので天下は特に注目してその成績のいかんを観察している。だから本県の成績が良好である事を天下に示せば、天下の廃娼を一日早めることになり、我が帝国から文明社会の恥を一日早くぬぐうことになる。しかし、もし本県が公娼を再興するなら、それは廃娼の不成績を天下に証明することになり、我が帝国の文明を数十年遅らせる。そして我が国の文明上の地位をながくひくくし、天下に対する文明の責任は重大である。一度廃したものを再興するのはそこに重大な理由があるはずだから、万一再興の日は、必ず、特に、文明世界の注目をひき、世界の正論によって弾劾され、我が文明の信用を傷つけ、帝国の光輝に暗影を投ずるかも知れない。だから、このような時、公娼再興の建議を行う者は、私利のために全て心を暗くしている者か、世界の大勢を知らず文明の本当の意味を理解せず、帝国の光栄、世道人心がどうなるかも全く無頓着な者という外はない。賢明なる議員諸氏は断乎としてこのような卑賤でまちがった議を排し議会の神聖を汚さないことを切望する。

 この事態に対し、翌年1月1日、内務大臣西郷従道は群馬県議会に対し解散命令を下した。府県会規則34条は、「会議中、国の安寧を害し、或は法律規則を犯すと認める時、内務卿は議会の解散を命ずることを得」とある。

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