随筆「甦る楫取素彦」第94回 | 中村紀雄オフィシャルブログ 「元 県会議員日記・人生フル回転」Powered by Ameba

随筆「甦る楫取素彦」第94回


◇明治8年(1875)楫取素彦47歳。

 楫取家文書によれば、この年6月20日、地方官会議が開かれ、この会議に出席とある。地方官会議は、民選議院設立の動きに対応したもの。4月、天皇は、元老院、大審院、地方官会議を設置し、漸次立憲体制を立てるという詔勅を出していた。地方官会議は民選議員設立の方向へ向けて踏み出した極く小さな一歩であった。

 この年、11月熊谷県権令楫取は「娼妓並貸座敷渡世規則」を公布した。(施行は翌年1月)。この規則は、後に群馬県議会で展開される廃娼の議論につながるものとして重要である。

 明治5年の奴隷船マルア・ルーズ号事件に関して発せられた太政官布告による娼妓解放令は不徹底なもので、営業者は「貸座敷業」に転身して、実質的には以前と変わらなかった。

 太政官布告は自由の拘束を禁じたが、売春自体を悪として禁じたのではなかった。そこで業者は座敷を貸し、女郎は自ら主体的に売春行為をするという形をとって従前と変わらぬ実態が続いたのだ。

 楫取が出した「渡世規則」は熊谷県下の貸座敷営業の場所を次の11ヵ所に限定するものだった。

 武蔵野 深谷、本庄

 上野国 玉村、新町、倉賀野、板鼻、安中、坂本、妙義、伊香保、

     一ノ宮


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