「上州の山河と共に」 第68回 再入院・別れ | 中村紀雄オフィシャルブログ 「元 県会議員日記・人生フル回転」Powered by Ameba

「上州の山河と共に」 第68回 再入院・別れ

 前橋カトリック教会で行なわれた葬儀には、信者の方々、中村塾の教え子や父母など多数が参加してくれた。

 妻の墓は、亀泉町の市の霊園の一画につくられた。緑の芝生の中に置かれている、十字架と聖書の言葉が刻まれた小さな石がそれである。

 妻の死は、私にとってかつて経験したことのない大きな出来事であった。妻がいなくなって、このことがよく分かるのである。体の中を冷たい風が吹き抜けていくように感じる。

<これから先、ゆりとどうやって生きていったら良いのか>私は、荒野に取り残されたような、言いようのない淋しさを感じていた。

 むなしい日々が続いた。私は時々妻の墓を訪ねたが、ある時、墓を前にして考えた。

<癌との闘いはどんなに辛かったことか。死を受け入れてゆくのは、どんなに悲しかったことか。お前との生活、お前の死、それを無駄にしてはならない。それを生かして、前向きに生きることこそ、俺のつとめだ。

お前は、短い人生を純粋に燃焼し尽くして行った。そして、お前の死に様は立派だった。俺は、お前に負けないように生きてゆく。それがおまえに対する俺のつとめなのだ。俺は、後ろを振り向かないで生きてゆく。俺の生き様を天国で見ていてくれ。>

 私は、勇気を出して生きねばならぬと、自分に言い聞かせながら、墓を後にしたのだった。(読者に感謝)

☆土・日・祝日は、中村紀雄著「上州の山河と共に」を連載しています。