第五章 地獄の満州 | 中村紀雄オフィシャルブログ 「元 県会議員日記・人生フル回転」Powered by Ameba

第五章 地獄の満州

かつての日本帝国主義や中国国内の封建的な力にかわって、そこには、共産党の一党独裁の壁があり、党幹部、特権階級の独裁があった。天安門広場に立ち上がった若者の心には、五四運動のときの若者と、抑圧をはねのけて民主化を求めるという点で共通のものがあったと思われる。北京の長安街を進む装甲車の映像を見て、私は、その昔、日本軍が中国に兵を進めた時もこうだったのかと思った。

 天安門事件は、我々日本人にとって、いろいろな意味で重要である。天安門事件を遡れば、そこには五四運動があり、これを起こさせた日本の侵略がある。中国の民衆は、この五四運動によって目覚め、民族主義はとどまるところを知らず燃え上がっていったが、日本はそれを理解せず、中国の民衆を敵に回して日中全面戦争に突入し、その後は、雪ダルマが斜面を転げ落ちるように太平洋戦争の敗戦に向かって突っ込んでいった。敗戦の結果、私たち日本人は、世界で最も進歩的というわれる憲法を手に入れた。そして、この憲法の下で自由と豊かさを謳歌しながら、隣の国・中国の天安門事件を他人事のように茶の間のテレビで見ている。

 天安門事件が私たちに教えることは、まず、人権の大切さである。自由や平等といった基本的人権が保障されていることが、個人の幸せ、社会の繁栄にとっていかに重要であるかということである。中国の人々には、表現の自由がない、政治を自由に批判することができない。政治を批判する人々の声は、銃口と流血によって押さえつけられた。天安門事件は、中国の人々が政府に対して不満をぶつけると最後はこうなるという例を示した。いわば、換気装置のない部屋に閉じ込められた12億の人々。12億の人々の不満が募り、汚れた空気が部屋に積り積もって極限に達したら、どうなるのだろう。

※土・日・祝日は中村著「炎の山河」を連載しています。