人生フル回転「日本の危機。死を三度決意した岸信介の気慨」 | 中村紀雄オフィシャルブログ 「元 県会議員日記・人生フル回転」Powered by Ameba

人生フル回転「日本の危機。死を三度決意した岸信介の気慨」

◇「このままでは日本は駄目になる」。こんな声がどこでも聞かれる。昨日(11日)は、ある経営者が激しい口調で言った。「国のために命をかけるという政治家は全くいなくなった」と。その人はこうも言った。「2世、3世の腰抜けばかりだ。竜馬のようなリーダーが現れれば皆んなついていく」と。

 個性的な人間が現れないのは教育のせいだという話になった。その人は、孫の授業の参観にいったら出歩く子どもに先生は注意出来ない、あんなざまではいじめがあっても抑えられないのは当たり前だ、と怒声を上げていた。

◇文芸春秋の最新号に岸信介のことが載っており感銘を受けた。岸信介は総理としての決意を語る。総理は一国の運命を背負って日本のため国民のためにやらなければならないことは死を賭してやる覚悟を持たなければならない、と。これは岸が安保改定を決意した時のことを振り返った発言である。

 岸信介は、安保改定の時を含め三度死を決意したという。最初は第二次世界大戦下戦況悪化の中で東條総理に全面対決した時である。岸は、日本はサイパンで最後の決戦をし不幸にして敗れたら降伏すべしと進言した。本当に死を決しての行動だったと振り返る。

 二番目はA級戦犯として巣鴨の監獄にいた3年3ヶ月である。毎日絞首刑の不安に怯えていたという。東條元首相等7名が絞首刑になったのだ。岸は、振り返って言う。あの3年3ヶ月は、私のその後の人生に非常な何かを持っている。あれを経験したせいで安保の決議をすることが出来た、と。

 そして、三番目が前記の安保改定の時の心境である。岸は、日本が真に独立するために、米国と対等な安保条約を作ろうと決意した。そのためには日本の力で日本を防衛する力を持たねばならない。そのことを目指す安保改定は、多くの国民の目には軍国主義の復活と写った。33万人の群集が国会に押し寄せた。東大生樺美智子がデモの中で圧死したのもこの時の事である。余談だが岸が命がけで頑張っている時、幼い孫の阿倍晋三(後の総理大臣)は、何も分からず屋敷でアンポハンタイと叫んでいたと言われる。ほほえましい光景が目に浮かぶ。

◇信念のない政治家が批判をうける中、岸元総理の生き方は、今日、改めて注目に値する。安保は遠くなったと思われてきたが、尖閣を巡る中国とのトラブルや暴力と謀略の国北朝鮮との緊張関係の中で、国防という事がさし迫った問題となり、安保が眠りから醒めたように眼前に立ち上がってきた。サンフランシスコ平和条約や安全保障条約の意味を学校できちんと教えなくてはならない。(読者に感謝)

☆土・日・祝日は、中村紀雄著「炎の山河」を連載しています。