人生フル回転「検事の改ざん疑惑の恐怖。代理母産業」
これまでも、警察や検察が被疑者に有利な証拠を隠すとか出さないとかという話は聞いていた。そういう事が冤罪につながるとすれば大変だと思いつつも、国家権力が故意に冤罪の原因をつくるとは信じられなかった。ほとんどの国民が同じ思いに違いない。
戦前の思想犯を取り締まった特高警察なら、証拠のデッチあげなどは日常茶飯事だったろう。小林多喜二は、特攻の拷問で虐殺された。残忍極まる殺し方で死体は全く正視できない状態だった。老母は多喜二の屍に抱きすがって「ああっ、いたましい、いたましい、よくも人の大事な息子を、こんなになぶり殺しにできたもんだ、おおっ、兄ちゃ、どこがせつなかった?どこがせつなかった?」と、体中の傷あとをなでさすりながら声をあげて泣いた。
これは個人よりも国家を重視する全体主義の下で起きたもの。もとより、今回の事件とは全く異質であるが、国家権力の濫用として共通なものがある。現代は、個人の人権を最大限に尊重する民主憲法の基盤の上にある。国家権力が故意に冤罪の原因をつくることは本来有り得ないことだ。逮捕された主任検事は、長年の慣れで人権感覚が麻痺していたのではないか。そして、これは、この主任検事1人の問題ではなく、検察が抱える構造的な問題だと思われる。最高裁が異例の早さで行動を起こしたのは、自らの問題として「はっ」と気付くところがあったからに違いない。対応をあやまれば、国家を支える正義が崩れ去る。正に日本の危機だ。
◇車で放送大学を聞いていたら「代理母産業」というショッキングな話をしていた。子宮を貸して他人のため赤ちゃんを産むビジネスである。インドでは政府も支援していて、海外からの客にメディカルビザを出す。民間ではこの目的の客を対象にメディカルツアーを行っているとのことだ。女性が得る報酬では平均的な家庭で四年間生活できるといわれる。
代理母を望む女性は貧困で疲れた人々である。近代化への飛躍がめざましいインドでこのような事が広く行われていることに驚く。「命」を創ることをビジネスにしてよいのか。依頼した夫婦は真の愛情を注げるのか。障害の子が生まれ引き取りを拒否した例があるという。子の命をもて遊んでいることだ。(読者に感謝)
☆土・日・祝日は、中村紀雄著「炎の山河」を連載しています。