人生フル回転「銀行の破綻とペイオフ。村木元局長と冤罪の恐怖」
ある高額預金者は、振興銀の前会長が逮捕されたとき解約を申し入れたが、銀行から満期まで解約は待って欲しいと説得された。あの時解約しておけば全額戻ったはずだったと悔しがっている。この事件は、銀行と預金に関する知識の必要性を改めて教えている。銀行に預けておけば心配ないという時代は過去のものになったのだ。自己防衛の備えが必要である。
◇村木元局長無罪の大阪地裁の判決は、検察に対する国民の信頼を失わせるものだと思う。まだ、最終決着がついたわけではないが、村木元局長の姿、態度を注視していた人は、この人が、言われているような犯罪行為を本当に行ったのかと不審に思った筈だ。正義を実現することを使命とする検察は、そんなにもずさんなものなのかと思ってしまう。
「凛の会」は郵便代が格安になる優遇制度を悪用しようとした。150円ほどかかるものが8円になるという。身障者などの弱者を保護する制度である。
この格安郵便適用のための証明書を部下に指示して不正に作らせたとして村木厚子氏は、虚偽有印公文書作成・同行使の容疑で逮捕された。
法廷で村木氏は、国家公務員という職に誇りをもってきたこと、国会議員の依頼を受ければ法に反することも引き受けるなどということはありませんと、きっぱり答えていた。
次々に明らかにされる検察による調書作成の過程は、冤罪はこのようにして作られるのかと思わせる。村木氏の指示で文章を作ったとされる元部下の上村被告は、「全部自分1人でやった。村木さんとのやりとりは検察官のでっち上げ。調書は作文です」と涙ながらに証言した。この場面を傍聴した村木氏の次女は、「ママ、わたしもう上村さんに怒ってないよ」と言った。ずい分怨んでいたことがわかる。
東大卒だらけのキャリア組の中で、地方の国立大出身ながら局長にまで出世した女性エリート官僚である。清楚で真面目なイメージであった。
この裁判は、裁判員裁判制度にも重要な影響を与えるものだ。司法に関して素人な一般市民は、検察が作った調書をチェックする力を持たない。この点は、警察段階の調書でも同じことだ。
裁判員制度と共に導入された公判前整理手続きを十分に活かすことが重要だ。市民の前に重要かつ困難な課題が立ちはだかっている。(読者に感謝)
☆土・日・祝日は、中村紀雄著「炎の山河」を連載しています。