先日、1970年代半ばにパリで実験映画を見た思い出として、「コレクティフ・ジュヌ・シネマ」についての記事を書いた。
facebookでも紹介したところ、意外に関心を持っていただけたのだが、映像作家の狩野志歩さんから「パリに長期滞在した時にお世話になったところです。マルセル・マゼ氏との出会いやデュラスの「陰画の手」をフィルムでプレビューしてもらった思い出」というコメントがご自身のfacebookにあったので、その当時の上映場所を聞いたところ、「シネマ・ラクレでやってました。定期上映会もあって、IFの協力を得て細江英公や寺山修司のフィルムを上映してもらったりもしました。2005年頃のことです」という返事がありました。
また、最近、海外映画祭での受賞も多い村岡由梨さんから「Collectif Jeune Cinémaは、私の作品のディストリビューターで、何かとお世話になっている団体です」というコメントもいただきました。
意外に現在もいろんな日本の作家とつながりがある団体であることに驚きました。
シネマ・ラ・クレ(La Clef,「鍵」の意で映画館がある通りの名、元々通りに鍵屋の看板があったらしい。サンシエの近く)は私も昔行ったことがある5区のアートシネマ(Art et Essai映画館)で、2007年夏ごろはやってなかった気がするが、そこで定期上映をやっていたんですね。
ラ・クレとコレクティフのことを調べていて、セシル・ラヴェルという映像作家・造形作家の「私とコレクティフ・ジュヌ・シネマの出会い」という記事(英語版)に出会いました。
彼女自身のサイトによれば、彼女はコレクティフのメンバーで、「40年前フランスで設立された最初の実験映画作家たちのコーペラティブ」と書かれています。
ところで、シネマ・ラ・クレを調べてみると「パリの最後のcinéma associatif」だったとあり、個人経営でもシネコンチェーンでもなく、団体(協会)運営の映画館として、インディペンデント/エクスペリメンタルな非商業的映画を上映していたが(アフリカ、南米の映画に力を入れていた)、持ち主が建物を売却したのに伴い2018年に閉館を余儀なくされ、その後、元従業員らが占拠して上映を続けたが2022年3月に閉館となったらしい。その後は再開のためクラウド・ファンディングで15万ユーロ(約2000万円)を目標に資金を集め、すでに目標額近くに達している模様。
一つの映画館を巡りたいへんな文化的戦いが行われていた事実を知りました。
(追記)2024/6/19, le collectif "La Clef Revival"(占拠時はl'association Home Cinéma)が正式にシネマ・ラ・クレを総額270万ユーロで購入の契約をしたと報じられた(クラファンでは37万ユーロが集まった)。4日間の上映ののち改修(1年の予定)に入るとのこと。