僕の上司、32歳、人妻(19) | 夫の知らない妻

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官能小説「他人に抱かれる妻」別館です。

「ぼ、僕、踊ったことなんかないんですけど!」
 

「大丈夫! 好きなように動けばいいのよ!」
 

「で、でも恥ずかしいです!!」
 

「いいから一緒に来なさい!!」
 

大音量の中、僕は課長と互いの耳元で文字通り叫びあい、ダンスフロアの中央に向かった。


六本木だか乃木坂だか赤坂だかわからないけど、課長はすぐにタクシーを止めた。


僕はほとんど来たことがないエリアだ。
 

午後10時を回っているというのに、通りにはたくさんの人たちが行き来している。
 

「小沢くん、ここよ」
 

課長に誘われるまま、僕はその一角にあるビルのエレベーターに乗った。
 

女性客と外国人が目立つその店に入れば、DJの声やら聞いたことのない音楽やら客たちのざわめきがごったになって、僕を取り囲んだ。
 

どうやら課長はこの店に何度か来たことがあるらしい。
 

「理沙ちゃん、久しぶり!」
 

店のスタッフだか誰だか知らないけど、若い男性が課長に声をかける。
 

軽く手をあげ、彼に笑顔を投げる課長。
 

騒々しい空間だけど、客層のせいか、やや上品な雰囲気も漂っていた。


多少なりとも酔っていたこともあり、僕は課長と触れあうぐらいの距離で、本能の赴くまま、音楽にあわせて体を動かした。
 

「上手いじゃない、小沢くん!」
 

踊りながら、課長が僕に声をかけてくる。
 

返事を返す余裕もなく、僕は汗だくになって動きながら、課長の姿を見つめた。


シックなワンピース姿で踊る課長の姿は、ダンスフロアの中でも明らかに際立っていた。
 

まさにクイーン。

 

周囲で踊る外国人男性たちが、ギラギラとした欲情的な視線を課長に投げてくる。
 

一般人とは違う、オーラが漂っている。
 

職場で見る課長とは、また違う姿。
 

一人の女性、いや少女に戻ったかのような雰囲気で、楽しそうに踊り続ける課長。
 

今夜はいやなこと忘れたいの・・・・
 

そんな気分でここに来たことを証明するように、課長は延々と踊り続けた。
 

「か、課長、もう駄目です・・・・」
 

僕が何度かそんなメッセージを送っても、課長は駄々っ子のように、「やだ、まだここにいるの」と言って聞かない。
 

結局、僕たちは1時間以上、踊り続けた。


「ああっ、凄くいい気持ちよ」
 

バーフロアに移動して、僕はジントニックで課長とグラスを鳴らした。
 

白い肌に汗をにじませた課長は、とても色っぽい。
 

相変わらず直視することもできず、僕はこんなスーパーな美貌の女性と何で一緒にこんなところにいるんだろう、という気分になった。
 

「課長、ここにはよく来るんですか」


僕の質問に、課長は小さくうなずいて答えてくれる。
 

「そうね、たまに来るわ。でもいつも一人よ、私」
 

「一人で?」
 

「そうよ。驚いた?」
 

「は、はい・・・」
 

遠く離れたところにいるというご主人。
 

独り身の寂しさを忘れたいとき、課長はここにやってくるんだろうか。
 

「中田さんと来ればいいじゃない」
 

「は?」
 

ジントニックの冷たいグラスを握りしめたまま、僕は固まった。
 

「私の予想だと、彼女、ダンス上手だと思うわよ」
 

「中田と、ここに・・・・」


「ここで二人で散々踊って、その後ホテルに行けばいいじゃない」
 

猫みたいな瞳を細めて、からかうようにじっと見つめてくる課長。
 

その視線に縛り付けられたまま、僕は課長が言ったことを想像してみた。
 

中田絹沙と一緒に踊る・・・・。

 

そして、その後にあいつとホテルに・・・・。

 

23歳になる新人女性。

 

不思議ちゃんとして有名だけど、どこか男好きのする彼女の体つき。

 

僕は慣れない手つきで彼女の服を脱がし、生まれたままの姿で抱き合うことを想像した。

 

「小沢さん、駄目ですっ、そこは・・・・」

 

「中田、俺・・・・」

 

「いやんっ・・・・、駄目っ・・・・、恥ずかしい、そこは・・・・」

 

想像以上に、彼女の胸は大きくて、魅力的だった。

 

そして、凄く熱くなっている彼女の大切なスポット。

 

「早く・・・・、小沢さん、早く、来てください・・・・」

 

「いくよ」

 

「はい・・・・、ああっ・・・・、ああんっ!・・・・」

 

中田絹沙の嬌声は、僕を激しく興奮させた。

 

彼女には男性経験があるんだろうか。

 

帰国子女というくらいなら、きっとあるに違いない。

 

ジントニックを舐めながら、僕はいつしか嫉妬心に絡まれ、そして下半身を硬くしていた。

 

「H, Beautiful」


いつの間にか、僕たちが座るテーブルのそばに、一人の外国人男性が立っている。

 

「Come on, why don't you dance with me ?」

 

いかにも、俺、ヒルズで金稼いでます、という雰囲気のハンサムな若者が、課長を誘っている。

 

課長は、あら、またなの? 的な笑みで彼を見つめ、結婚指輪が光る左手をひらひらとかざしてみせた。

 

そして、向かい側で自信なさげに座る僕のことを瞳で示す。

 

「What ?  This guy ?」

 

「Exactly」

 

彼は、おいおいこいつが? そりゃたまげたぜ、的に両手をあげ、首を振りながら立ち去った。

 

「課長、今のは?」

 

「ふふふ、結婚してるのって言ってやったわ。で、夫はあなただって」

 

「ぼ、僕が課長の結婚相手?・・・」

 

「びっくりしてたみたいね、彼」

 

課長のかっこいい仕草に改めて感動してしまう僕。

 

DJが早口で何かを叫んでいる。

 

「小沢くん、今日はバブルナイトなんだって」

 

「バブルナイト?」

 

「どうりで古い曲ばかり流れてると思ったわ」

 

よくわからないが、どうやら今夜は特別に昔の雰囲気で音楽が選曲されているらしい。

 

フロアではデッドオアなんとかというアーティストのスピンがどうのこうのという曲が流れている。

 

しばらくそこに座りながら、僕はこの後どうなるんだろうかと考えた。

 

僕との会話も止めて、課長はどこか寂しげな雰囲気でジントニックを飲んでいる。

 

「あの、課長・・・・」

 

僕が課長に声をかけようとしたときだった。

 

「小沢くん、もう一度行くわよ」

 

「また踊るんですか?」

 

「チークダンス」

 

一言そう言うと、課長は僕の手を握りしめ、再びダンスフロアに誘った。

 

それまでとは一転して、スローな曲が流れている。

 

寄り添って佇むように踊る何組かのカップルを見つめ、僕は息を飲んだ。

 

「か、課長・・・・」

 

僕の戸惑いを無視し、課長はフロアの真ん中に僕を連れ出し、向かい合うようにして立った。

 

「小沢くん、抱いて」

 

「えっ?」

 

「抱きしめて、私を。強く」

 

課長は僕の腕をとって、細い腰に強引に誘った。