奪われた妻(47) | 夫の知らない妻

夫の知らない妻

官能小説「他人に抱かれる妻」別館です。

もう何度目になるだろう。

 

慶次にとって、この天井裏に忍び込むことは、もはや日課のようになってしまった。

 

疾風を誘うでもなくただ一人で、彼は深夜の静寂の中、漆黒の影となってそこに身を潜める。

 

下界で繰り広げられる男女の抱擁、それが行われぬ夜は一度もなかった。

 

合意など存在しない、ただ欲情に狂った男が人妻の肉体を好き放題にいたぶる時間。

 

毎晩、東の空が白々と明けてくる時間まで、隆景は気に入りの妾と激しく愛し合った。

 

島で生まれ育った人妻が隆景の女となり、既に数年が経過している。

 

今もなお、彼女は夫とは別の男に抱かれることに、毎晩激しく抵抗していた。

 

だが、それを隆景は喜んだ。

 

「桔梗、もっと抗うのじゃ。わしはそのほうが興奮する」

 

己の欲情を驚異的に持続させ、彼は時間をかけて人妻をいじめ、そしていつも屈服させた。

 

そして、今夜もまた・・・・。

 

慶次は硬くなった自分のものを曝け出し、きつく握りしめながら下方から漏れる光の穴に視線を注いだ。

 

「桔梗、どうだ、いいんだろう」

 

「駄目っ・・・・、殿・・・・、なりませぬ・・・・」

 

全ての服を脱がされた人妻が、布団の上で男に深々と貫かれている。

 

美脚を大胆に広げ、男の腰を迎え入れている桔梗。

 

その指先が布団の上で震えるのは、屈辱のせいか、それとも知ってしまった快楽がそうさせているのか。

 

腰を振りながら、隆景はなまめかしい曲線を描く人妻の体を存分に撫で回す。

 

その口が彼女の胸元に吸い付き、巧みに舌を動かした。

 

「あんっ・・・・」

 

瞳を閉じ、思わず甘い息を吐いてしまう桔梗。

 

「すっかり感じやすくなったな、桔梗」

 

「違います・・・・」

 

「自分で腰を振ってみろ・・・・、そうだ・・・・、気持ちよさそうな顔じゃないか・・・・」

 

「あっ・・・・、あっ・・・・、あんっ・・・・」

 

布団を濡らすほどにたっぷりと潤った人妻の大切な箇所で、男の興奮が荒々しく往復する。

 

「あっ・・・、あっ・・・、あっ・・・」

 

次第に声を短くし、桔梗は耐えきれない風に首を振った。

 

桔梗、気持ちいいのか、そんな男にされて・・・・

 

複雑な感情が慶次を包む。

 

島の宝を本土の他人に奪われてしまったかのような、空虚な感情。

 

彼女は初恋の女性だった。

 

最近になって、慶次はそれに気づいた。

 

彼女が隆景に強引に奪われ、その腕の中で何度も絶頂に達する姿を見たときに・・・・。

 

「桔梗、いくぞ」

 

狂ったように腰を動かしながら、汗まみれの隆景が桔梗にささやく。

 

快感の坂道を一気に駆け上がっていく人妻は、もはや言葉を発することができない。

 

自分で腰を振るように肢体をくねらせながら、彼女はただ喘ぎ声を漏らした。

 

「あっ・・・、あっ・・・、ああっ、いっ・・・・」

 

最後の瞬間、人妻の両脚が男を欲しがるように、強く彼の腰を挟みつけた。

 

「ああんっ!」

 

桔梗の嬌声に呼応するかのように、隆景が深々と腰を押し出したまま、全身をびくびくっと震わせる。

 

息を殺し、二人を見つめ続ける慶次。

 

ハアハアという男女の乱れた息、そして快感を確かめ合うように唇を吸い合う湿った音が、下方で響く。

 

「桔梗、もう離さぬぞ」

 

ここ最近、隆景は行為の後、そんな言葉を繰り返しささやくようになった。

 

慶次は、その言葉の意味を深く考えてはいなかった。

 

だが、今夜、彼はそれを知ることになる。

 

「桔梗、そろそろこの島を離れるときが来たようじゃ」

 

「えっ?」

 

絶頂の空間を漂っていた人妻が、覚醒したように声をあげ、男を見つめる。

 

「何年もここにいたが、いよいよ本土に戻るときが来た」

 

「殿、それは・・・・」

 

「兄上の家中が混乱しておる。これはこちらの工作が効いたせいでもあるが」

 

「・・・・」

 

「今なら、兄者から国を奪還できる。本土に戻り、一気に攻勢に出るときが来たのじゃ」

 

一気に緊張に包まれていく慶次。

 

島を離れるだと・・・・?

 

「殿、では私は・・・・」

 

桔梗がわずかな望みを漂わせながら、隆景にすがるようにささやいた。

 

「言っただろう。お前は二度と離さぬ」

 

「・・・・」

 

「一緒に行くのじゃ、桔梗。この島とは永久に別れるのじゃ」

 

慶次は気づいた。

 

隆景の冷酷な言葉を浴びた瞬間、桔梗の瞳に絶望と、確かな決意の光がともったことに。