奪われた妻(15) | 夫の知らない妻

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官能小説「他人に抱かれる妻」別館です。

「桔梗、いくぜ・・・・」

 

よだれを垂らさんばかりの表情で、慶次は自身の腰を一気に桔梗の秘密に突き立てようとした。

 

桔梗が唇を噛み、全てを覚悟した時。

 

「ううっ・・・・・・」

 

上にいる慶次が、突然後頭部を抑え、傍の地面に倒れ込んだ。

 

こぶしくらいの大きさの固い石が、表面に血を滲ませて転がっている。

 

「桔梗、大丈夫か!」

 

すんでのところで慶次の毒牙から逃げることができた桔梗は、素早く立ち上がり、石が飛んできた方向を見た。

 

「疾風!」

 

腹ばいでうごめく慶次に唾を吐き、桔梗は素早く服を着て疾風のもとに走り寄った。

 

胸元に飛び込み、涙で濡れた顔を埋める。

 

「疾風、助けにきてくれたのね・・・・」

 

「大丈夫か、桔梗」

 

「危ないところだったよ・・・・。もう、遅いんだから・・・・」

 

「すまん。波が高くてな、今日は」

 

桔梗を背後に隠し、疾風は慶次にゆっくり近づいた。

 

「慶次、島を出ていくんだろう、お前」

 

這ったままで頭を押さえつけている慶次は、しかし、返事をしようとしない。

 

「おい、慶次、大丈夫か・・・・」

 

しゃがみ込んだ疾風が慶次に腕を伸ばしたときだった。

 

「うおお!!」

 

咆哮をあげて立ち上がった慶次が疾風に飛びかかった。

 

「慶次、てめえ・・・・」

 

格闘。

 

組み合った二人が地面に転がり、互いを激しく殴打しあう。

 

「疾風!」

 

立ち尽くしたまま、桔梗が叫んだ。

 

豪雨が地面を泥にし、二人をずぶ濡れにしていく。

 

疾風の腕をへし折る勢いで曲げ、慶次が激しい頭突きを彼の顔面に与える。

 

「ううっ・・・・・」

 

ふらついた疾風に、慶次はなおも襲いかかる。

 

「渡さねえ・・・・、疾風、桔梗はお前に渡さないぜ・・・・・」

 

何度も頭突きを繰り返され、組み伏せられた疾風の勢いが次第に弱まっていく。

 

「疾風!」

 

桔梗が悲鳴にも似た声をあげる。

 

「疾風、ぶっ殺してやる・・・・」

 

大きな岩を手にし、慶次が疾風の顔面に振り下ろそうとする。

 

「やめて、慶次!」

 

「うるせえ、桔梗! 黙ってろ!」

 

笑みを浮かべながら、慶次が岩を持ち上げた。

 

そのとき、疾風の右足が後方から跳ね上がり、慶次の後頭部を蹴り上げた。

 

「うぎゃっ・・・・」

 

そこは石をぶつけられて既に出血していた箇所だ。

 

力を失って倒れ込む慶次に、ふらつく疾風が逆襲する。

 

男の腹にまたがり、何度も殴打を与える。

 

「立ちやがれ、慶次」

 

もはや反撃できない慶次の巨体を引き上げ、疾風は男の片足を持ち上げた。

 

「は、疾風、何する気だ・・・・・」

 

「へへへ・・・・、桔梗を襲った罰だ・・・・」

 

慶次の片足を抱えあげたまま、疾風は大木のそばにある茂みに動いた。

 

片足で立たせた慶次をある場所で止め、不敵な笑みを浮かべる疾風。

 

背後にある地面を見つめる慶次。

 

そこには、槍のように先端を鋭く尖らせた低く細い木が地面から伸びていた。

 

そこに背中から押し倒されればどうなるか、慶次はそれを想像し、息を呑んだ。

 

「疾風、お前・・・・」

 

泥まみれの二人の男が、ただ静かに見つめ合う。

 

・・・・・

 

慶次が笑みを浮かべた。

 

そして。

 

豪雨の中、疾風が叫び声をあげた。