不倫夫の物語 その6

その音声証拠は

 

大変苦しそうに旦那様が

 

不倫を認めた声だった

 

 

妻の

 

不倫をしたのよね?

 

という問いに

 

 

そういう意味では

 

そういうことになる

 

 

それは日頃の自信満々で

 

妻にモラハラの

 

暴言を吐く旦那様の声とは

 

 

思えないほどの

 

消え入りそうな声だった

 

 

そう

 

 

この日

 

意を決した妻が

 

とうとう反撃に

 

出たのである

 

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この時の

 

妻の話し合いの目的は

 

 

旦那様の自供を

 

記録することにあった

 

 

そう言った意味では

 

妻の目的は

 

 

達成された

 

ということになる

 

 

過去においては

 

不倫夫との話し合いは

 

 

旦那様によるモラハラで

 

マウントを取られてきた

 

妻にとっては

 

 

小手先では

 

太刀打ちできない

 

至難の業だった

 

 

不倫夫との話し合いでは

 

感情的になりやすいなど

 

 

女性が持つ脳の特性に

 

飲まれないように

 

するために

 

対策を練る必要があった

 

 

妻はこの弱点を

 

みごとに乗り越えて

 

旦那様との話し合いを

 

 

妻が主導権を握り

 

成し遂げたのである

 

 

それは

 

こう来たらこう出る

 

と言った

 

あらゆる場面を

 

想定しての

 

 

まるで将棋やチェスのような

 

どこまでも先手を読む練習

 

 

この練習により

 

不倫夫がどんな態度で

 

攻撃しようが

 

 

妻は動じずに

 

狂った夫の攻撃に

 

対処することを

 

可能にしたのだった

 

 

友は私を相手に

 

練習し続けた

 

 

そして妻は静かに

 

話を締めくくる

 

 

話してくれて

 

ありがとう

 

 

夫はシュンとして

 

それまでのモラハラが

 

嘘のようにうなだれて

 

 

…僕は君が

 

嫌いなわけではないんだ

 

 

気が合う方だと思うし

 

一緒に旅行したり

 

外食したりはとても楽しい

 

 

でも

 

残りの人生は

 

 

別の時間

 

彼女との時間を

 

大事にしたいんだ

 

 

これでも僕は

 

君を大事に思っている

 

 

でももう恋愛感情は...

 

ぼくらは夫婦としては

 

破綻しているんだ...

 

 

まるで矛盾した論理を

 

ぶつぶつと念仏を

 

唱えるがごとく

 

 

旦那様はうつむいたまま

 

堂々巡りのように

 

つぶやき続けていた

 

 

夫の話を遮り妻は静かに答える

 

 

そう

 

今のあなたの

 

気持ちはそうなのね

 

 

あなたと

 

歩んだ結婚生活と

 

そこから得た人間関係

 

この環境を

 

 

あなたがたの

 

身勝手な理屈で

 

 

はいそうですかと

 

今日からなかったことに


しましょうなんて

 

 

あなたのように

 

私にはできないです

 

 

私の気持ちを

 

整理して

 

 

今後どうするかを

 

決めるには

 

とても長い時間が

 

かかると思います

 

 

音声証拠には

 

このように残っていた

 

 

妻は夫の不倫で

 

自分自身を見失って

 

心を大揺れに

 

揺らしていたが

 

 

私はこの日を境に

 

妻の中の何かが

 

変わったような

 

感覚を得ていた

 

 

つづく