『舌打ち』 |  碧い月のひとりごと(八月乃暖穏の覚書)

 碧い月のひとりごと(八月乃暖穏の覚書)

あることがきっかけで、記憶が長くもたなくなったことに気づきました。
だから、忘れないために。
大事な記録と記憶。 忘れたくない思い出。
気が向くままに書いていきます。



『チッ…』と、舌打ちが聞こえた気がした

また、お前かよ… 

そんな言葉を口にされなくても聞こえてきそうだった

何も言わなかったのは、もう来るなってことだよ
って、お前気づけないの?

呆れたような、嫌々そうな態度が 全てを物語っていた


あたしは『ごめんなさい…』も言えずに あとにする

『さようなら』も言わずに



振り向かない 振り向かない 振り向かない…
背中に刺さる視線が痛い…

もう来んなよ!と、視線が叫んでいるのがわかるから…


『隣にいる人は誰ですか…?』と 聞きたかったけれど

聞くことすら許してもらえそうになかったから…

ザッザッと自分の靴と砂利の擦れる音を聞きながら
唇をかみしめた


指先がジンジンと痛い…

きつく握られた拳の内側に食い込んだ爪先が痛い


呆れちゃったよね…

呆れてるよ

あたしも自分に呆れたよ…


まだ、受け入れてもらえるかも…だなんて

バカだねぇ ほんとバカだよ


情けなさいっぱいのあたしに

誰も救いの手なんて差しのべてくれない…
なんて、思ったけどさ…

いたんだよ 

『まだ死ぬなよ?明日も顔みてやるからさ』って

そんなことを言う奴が


そうだね… 

あたしは泣きそうな笑いそうな複雑な顔をして

あなたを見つめたよ


『そうだね…生きてみようかな…もう少しね』