Beer Voyage (ビア旅)

Beer Voyage (ビア旅)

旅の中で出会ったビールとお店、そこから垣間見た人々の生活について
(Daily living,Shop Info through MY Beer Voyage on the globe)
最近はビールに限らず「発酵」に踏み込んでブログを展開していきます。


熊野の天然水と木桶が醸す清らかで力強い酢「丸正酢醸造元」

 

先代から引き継がれた伝統的な醸造酢の底力

 

私はもともとベルギービールの世界が楽しすぎてビールのライティングを始めたのですが、そこからコロナ禍を経て「嗜好」というよりも「健康」に関しての「発酵食品」に関心がわき、学びのアクセルを踏みこんでしまいました。(2021年発酵スペシャリスト→2022年には日本発酵文化協会が主催する発酵プロフェッショナル資格を取得)


私がこの酢に出会ったのは、日本発酵文化協会から案内があった某デパートの「木樽フェア」がきっかけでした。デパートの会場では醸造元の幹部が直々に店頭に立たれ、そこで試飲させていただき、お話を伺いました。当時の私は「酢酸発酵」について「1発酵オタク」として、関心を持ち始めた時期でもありました。


試飲させていただいた純米酢の印象は、「なんじゃこの酢は!!」(ちょっと古いけど松田優作さん風)。酢が単に酸味をもたらす調味料ではなく「出汁」を含んだ液体のように思えたからです。海外などではドレッシングは使わず、生野菜には「酢」「塩」「油(オリーブオイル等)」の味付けが定番です。レストランにもドレッシングなどなく、この調味料がドンと並んでいることがよくあります。この醸造元さんは現在、海外(スペインやアメリカ、アジア)での販売を視野に入れ、活動されているとのことで、海外でも人気がでるのはよくわかります。


(写真:私が虜になった純こめ酢 出汁が入ってる!と思いました)

(写真:醸造元の代表商品たち 真ん中の赤酢は江戸前の寿司のシャリによく使われます)


2026年6月にやっと、数年越しの思いで醸造元までお伺いすることが叶いました。せっかくならばと旅好きとしては、行きは(三重の松阪)⇒(和歌山新宮)、帰りは(和歌山那智勝浦)⇒(大阪天王寺)経由と、紀伊半島一周の旅に挑みました。どちらも片道5時間ほどの旅程です。

(写真:松阪駅にて近鉄からJRに乗り換え。始発の南紀1号)

 

特急は三重の松阪から尾鷲経由で和歌山の新宮に入ります。新宮は最近は「熊野詣」で多くの観光客が訪れています。私も醸造元へ伺う前に「熊野速玉大社」を参拝しました。

 

新宮から熊野速玉大社までのバスは、クレジットカードやPayPayが使えますが、なぜか交通系ICが使えない(PASMO SUICA ICOCA等)という「和歌山オリジナル仕様」でした。理由はおそらく、クレジットカードでそのまま入出場できる、イギリスの地下鉄みたいに「急増するインバウンドの方向け」が優先されているからではと思います。(Pay Pay払いは着駅で値段を見て、QRスキャンして運転手さんに見せながら金額を打ち込みますよWWW)

 

台風が接近している中での晴れ間で、ピーカンな青空が出迎えてくれました。

(写真:熊野速玉大社本殿)

 

醸造元さんはそこからJRに乗り、那智勝浦方面へ移動します。最寄り駅は「紀伊天満駅」です。

駅からすぐに看板が見える距離です。外の駐車場付近には、この地でこんこんと湧き出る名水の謂れが書かれた井戸があります。醸造元さんの中にも井戸があり、歴代、この名水で酢を醸してこられました。この日は事前にお会いする約束をして、事務所に伺いました。

 

(注意)商品は事務所が開いている日は購入可能だそうです。但し一般の方への工場見学対応は

    なさっていませんのでご注意下さい。

 

初めに酢を醸造されている井戸をご案内くださいました。毎日ここに祈りを捧げてからお仕事に入られるのだそうです。ビールを中心に、世界いろんな場所をめぐりましたが、共通して「銘品」には、原料とそれをはぐくんだ自然への「敬意」が感じられる気がしました。豊かな熊野の伏流水は、工場の中でもこんこんと湧いています。一杯飲ませていただいたのですが、冷たく清らかで、ほんのり甘い気がしました。

 



次は木樽から酢を充填させる工程です。最近は海外へ販路を広げておられ、国際規格も取得されており、工場内部も整然としています。奥にある「木桶」に文字が書かれていますが、実はこの醸造元さんでは、思いを込めて木樽ごとに歴代の「横綱」の名前が記されています。伺うと、本当に「その横綱の名前のとおりの酢」が出来上がるそうです。不思議なお話ですよね。

 


 

この場所の奥に熟成中の「木桶」が脈々と守られています。入口には、先代の社長の写真が飾られています。お話を伺うごとに、この社長がいかに先進的な「アイデアマン」だったかが伝わってきます。従業員が木桶が並んでいる場に入る際、必ず柏手を打って、敬意を払って作業されるそうです。深遠な深遠な空間ですよね。

「蔵付き酵母」がいる蔵は、静かに何かがその場を守っているような、妙にほっとする空気を醸しています。木樽には、稲わらで作ったゴザが巻かれ、湿度・温度の調整がされています。樽には先ほどお話しした「横綱」の名前がそれぞれ記されています。

発酵が進むにつれ、桶の中から「花」のような神々しい香りがするそうで、ビアライターの端くれの私が感じたのは、フランダースレッドというビールで、酢酸発酵の原理を使った「ドゥシャス・ド・ブルゴーニュ」に似た芳香を感じました。

 

しかしこの立派な「木桶」なのですが、近代化の中で「木樽」を作る職人が減少。この手法で醸造する工場が減ってきました。しかしこの「木樽」を見直し、醤油、酢、味噌、酒などの醸造元や関係先がタッグを組み、「木桶職人」を復活させ、この価値を高める活動を展開されています。

 

(参考)木桶職人復活プロジェクトの取組みについて

   

 

 
 

 

海外(ベルギー)では、現地特有の自然発酵ビールである、ランビックビールを醸造されている場を見学したことがあります。工場内は同じように木造で、ひんやりとしていて。やはり醸造蔵の中には「何かがいる」気がしました。長い年月、人と一緒にビールを醸してきた蔵付きの「酵母」が守ってきた深遠な世界ですね。

 

この日の宿はJRの隣駅である、勝浦に取りました。勝浦についても少々触れます。


太平洋に面した勝浦は「まぐろ」や「クジラ」を代表する漁業の港。ここのグルメといえば、やはり「まぐろ」を代表とする海の幸です。発酵オタクが見落とせないのが、「さんま寿司」や「めはり寿司」です。「さんま寿司」はそのまま食べるのものと、しばらく発酵を進め、馴れ寿司としていただくものがあります。寒い時期はこの癖強の「さんま寿司」も流通しているようで、滋賀の「鮒ずし」のような独特の発酵臭がする逸品です。さんま寿司を販売していた方に聞くと「夏場はないけどね。私は食べらんないんです!」だそうでした。
私は晩御飯に「めはり屋」さんでセットをいただき、大満足。。

(写真:上=さんま寿司/下=那智勝浦にある「めはり屋さん」の定食)

 

滞在中は期せずして、某大手ビール会社の新商品の発売日でした。コンビニで発見して「めはり寿司」とともに堪能しながら帰路につきました。特急は台風に追っかけられながら激しい雨の中に突入していきましたが、無事に大阪に帰着。熊野の神様たちが無事に送り届けてくださったのかと思い、感謝しました。

 

ちなみにめはり寿司は食べるときに”目を一杯に見開く=眼を張る”からこの名がついたとか。昔は高菜の古漬けを使っていたため、乳酸の酸味が出て、寿司のような風味になったそうです。コロッと手軽で、保存性もある携帯食。すばらしい先人の知恵ですね。

 

和歌山の紀伊半島方面は、交通面で関西人でも頻繁にはいけない土地ですが、世界遺産の「熊野古道」含め、雄大で厳しい自然とともに生きてきた「神聖な空気感」のある土地だと思いました。

関空まで飛行機でこられれば、そこからJR日根野から特急に乗り換えて4時間の旅路です。数日かけて「熊野古道」「熊野三社巡り」「海山の恵み」を楽しむのもすばらしいかと感じました。

ぜひ一度、脚を伸ばしてみてはいかがでしょうか。

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丸正酢醸造元 

▼注意事項▼

(*)関西・関東のデパートを中心に催事出展されていますので詳細はほホームページ・SNSをご確認ください。

(*)現地工場横事務所が開いている日は、商品の購入もいただけるようです。

(*)一般向けの工場見学はされていませんのでご注意願います。

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